アフガン・イラク・北朝鮮と日本
《掲示板の論点8》経済制裁について考える2

  [論点解説]

 以前、当サイトの《掲示板の論点2》で、'03年秋頃における北朝鮮経済制裁に関する議論の一端を紹介しました。その後'04年12月に、横田めぐみさんの「遺骨」がDNA鑑定によって偽物である事が明らかになり、日本政府首脳から「今後もこの様な北朝鮮の不誠実な対応が続くなら北朝鮮への経済制裁も視野に入れる」という言明が為され、北朝鮮経済制裁を求める国会決議が採択されました。

 当サイトでも、再び北朝鮮経済制裁についての議論が巻き起こりました。当欄では、その時の特徴的な議論や提示された資料などを紹介していきます。先の《掲示板の論点2》と併せて参照していただく事で、更にそれぞれの主張の論点が鮮明になると思います。

  はじめに−北朝鮮経済制裁に関する当サイトの立場(拙稿より引用)

【再掲】 リベラルな立場から難民救援を(抄) 
投稿者:社会主義者  投稿日:12月12日(日)01時23分26秒
リベラルな立場から難民救援を 投稿者:三浦小太郎  投稿日:12月10日(金)08時43分38秒

この議論は、正直もう尽くされていると思うんですよ。他板でも書いたんですが、北朝鮮問題では、食糧支援や太陽政策の是非、経済制裁の是非など、各自の立場からそれぞれの意見は出されていると思う。勿論それぞれの意見を展開する事には意味がありますが、左派の方々はとにかく難民救援に反対の方は誰もいないでしょう。私のような立場からの北朝鮮打倒論・反共論に賛成はできないでしょうけど、リベラルな立場で難民救援をやっておられる方々は沢山いらっしゃいます。その方々とできれば連携したり、賛成できる範囲で協力し合って、この冬に凍え死ぬかもしれない難民の救援について考えられるのがいいと思いますよ。石丸次郎さんのお考えとかは左派の皆さんにも共感できるものじゃないですか。私は石丸氏とは異なりますが、あの方の実践活動と難民への献身的な愛情には頭の下がる思いがします。

私は、北朝鮮をスターリン的な全体主義体制、それに儒教の悪しき面とアジア的専制の混合したおおよそ自ら改革するのはほぼ難しい体制と考えていまして、これが援助や対話で改革解放に向かうとは私の考えではありえないことなので、必然的に『いかに打倒するか』と言う発想になります。しかし、これはお互いの立場の違いですから、この是非を議論するよりも、今死んでいく人を助けると言う一点では特に反対はないんじゃないですか。残念ながら、収容所で殺されてゆく人々を助ける力は私たちにはない。そうであるならば、難民を支援している団体、個人や、もしくは日本国内の脱北者を支援している民団の支援センターとかに少しでも応援、支援すると言うのがよいのではないですか。既読の方が多いとは思いますが、『北朝鮮難民』石丸次郎(講談社現代新書)が最も優れてかつコンパクトな解説書でしょう。少なくとも脱北者に関しては、それほど『反日』でもないです。もうそういう余裕もない。むしろ、元帰国者の脱北者の日本への思い入れは、故郷に帰りたいと言う意識は激しいものがあります。この辺はやはり正論今月号の野口孝行氏の文章にも胸が詰まるものがありました。(以下略)

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 あと、これだけは。(もう夜遅いので、三浦さんの投稿を引用させてもらいます。)

 
私は、上掲の三浦さんの投稿のスタンスで掲示板運営をしています。
 北朝鮮打倒論や経済制裁など、常連の間でも意見が分かれている問題については、無理に此処でひとつの方向にまとめる気はないです。どっちが悪いとも良いともいう気は無い。とことん真摯に議論すれば良い。たとえそれが「小田原評定」と言われようとも、此処は拉致板では無いのだから。敢えて言うならば、『リストラも戦争も拉致もゴメンだ』『イラク戦争も金正日もNO!』『平和・民主・人権の東北アジア』−これが<拙サイトの目指す方向>であり、これで一致しておれば、後は「大同小異」「求同存異」で結構。しかし、前述の<目指す方向>自体を否定し、掲示板全体に唾を吐きかけるような投稿については、当方としても応分の反撃をさせてもらいます。私はそれよりも、皆さんが各位取り組んでおられるメールや署名や集会参加などの行動交流・情報交換の方に重きを置きたい。−そう思っています。


【編集者注】 上記斜体フォント部分は編集者(=投稿者)が本欄掲示の為に別途強調。
  参考資料 ('04年12月現在)


【参考資料1】 参議院拉致特別委の北朝鮮経済制裁決議(救う会ニュースより) 
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2004.12.15-2)
 
■全会一致で経済制裁発動の検討を−参議院拉致特別委が決議

 参議院拉致特別委は、昨日12月14日、国会閉会中にもかかわらず開催され
た委員会で、経済制裁発動、食糧追加支援凍結を求める意見書を採択した。10
日の衆院拉致問題特別委員会では、共産党が決議案採決前に退席したが、参院の
決議文に「北朝鮮との間で粘り強く協議を進める」との文言が挿入されたため賛
成にまわった。全文以下の通り。

◆北朝鮮による日本人拉致問題の解決に関する決議

 平成16年12月14日
 参議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会

 本年11月に開催された第3回日朝実務者協議において、横田めぐみさん、松
木薫さんのものとして北朝鮮側から提出された遺骨が、今般、我が国捜査機関の
鑑定により別人のものであることが明らかとなった。

 この北朝鮮の不誠実な対応は、我が国の尊厳を著しく損うとともに、拉致被害
者の心情を弄ぶものであり、強い憤りを禁じ得ない。

 平成14年9月の小泉総理訪朝に際し、我が国の主権及び我が国民の基本的自
由と人権に対する重大かつ明白な侵害である日本人の拉致という忌まわしい国家
的犯罪行為の実行を北朝鮮が認めてから既に2年の歳月が経過した。この間、5
人の拉致被害者とその家族の帰国が実現したが、先の実務者協議における安否不
明者に関する北朝鮮側の説明は、我が国民の疑問に応えるものとはなっていない
ことが今回の鑑定結果により明らかとなり、このような著しく誠実を欠いた北朝
鮮の姿勢は、強く糾弾されなければならない。

 政府は、この際、拉致問題の解決なくして国交正常化はありえないとの不動の
立場を堅持し、北朝鮮との間で粘り強く協議を進めるとともに、次の諸点に留意
し、拉致問題の抜本的解決の促進に遺漏なきを期すべきである。

1 改正外為法や特定船舶入港禁止法等現行の国内法制上とり得る効果的制裁措
置の積極的発動を検討すること

2 いわゆる対北朝鮮人道支援については、北朝鮮側からの誠意ある回答が得ら
れ、その信憑性が確認されるまでの間凍結すること

3 今回の実務者協議の後、我が国に持ち帰った資料については、真相究明に寄
与するよう、可及的速やかな科学的鑑定・分析を進め、その結果を当委員会に報
告すること

4 朝銀系信組に対する監督を一層厳格に執行すること

5 拉致問題に関与した責任者・実行者等の厳正な処罰の執行とその報告、具体
的な再発防止策の確立、拉致被害者に対する補償の確実な履行について、北朝鮮
に対し強く求めること

6 政府認定に係る拉致被害者以外で拉致の疑いのある事案についても、その真
相究明に積極的に取り組むとともに、拉致被害者の認定を進めること

7 本年4月に国連人権委員会が採択した決議において、北朝鮮に対し拉致問題
を明確に透明性をもって緊急に解決することを求めていることを踏まえ、かかる
国際社会の支持と協力をより強固なものとするため、6カ国協議を始めとするあ
らゆる機会を捉え、外交的努力を引き続き強化すること

8 帰国された拉致被害者及び家族に対する支援について、国、地方公共団体、
民間団体の連携に留意し、十全の対応を図ること

 右決議する。
...............................................

http://www.sukuukai.jp/houkoku/log/200412/20041215-2.htm


【参考資料2】 自民・民主両党の北朝鮮経済制裁決議(救う会ニュースより) 
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2004.12.14-3)

 自民・民主両党は、横田めぐみさんの「骨」と称される鑑定結果を受け、「経
済制裁の発動」を求める決議を採択した。
 また、公明党は決議を出していないが、神崎代表が「経済制裁を考えないとい
けない」と明言し、東順治国対委員長は「経済制裁をして、すべて真実をつまび
らかにさせてから始めないと、話にならない」と語るなど、3党が「経済制裁」
で一致した主張を行った。

■経済制裁を決議−自民・民主拉致対策本部

◆自民党決議
平成16年12月10日
自由民主党 北朝鮮による拉致問題対策本部

 先の実務者会議において、北朝鮮側から横田めぐみさんのものとして提出され
た遺骨は、わが国捜査機関の鑑定により全く別人のものであることが判明した。

 このことは、わが国が重ねてきた安否不明者の調査に対する北朝鮮側の不誠実
さを如実に示すものであり、わが国を愚弄する断じて許しがたい行為である。当
然、わが国は残された「人道支援」を直ちに凍結すべきである。

 これまで、わが党は、既に経済制裁のシュミレーションを発表し、北朝鮮側の
不誠実な姿勢が明らかになった場合には経済制裁を決断すべきであると考えてき
た。われわれは、今こそ「拉致問題の解決なくして、国交正常化なし」との原則
を確認し、

(1)「横田めぐみさんのご遺骨の鑑定結果」に対する明確な回答
(2)国際手配している辛光洙をはじめとする被害者3人の早急な身柄引渡し

 以上二点、期日を儲け最後通告として北朝鮮側に回答を迫ることを政府に対し
強く求める。

 今後、期限以内に回答がない場合、あるいはわれわれが納得できない回答があっ
た場合には、即刻、経済制裁の発動を決断すべきである。

◆民主党決議
2004年12月13日
北朝鮮による日本人拉致事件の全面的な真相究明を求める決議
民主党 拉致問題対策本部

 8日、横田めぐみさんのものとして北朝鮮側がわが国政府当局者に渡した遺骨
が、DNA鑑定の結果別人と判明したことが公表された。その他、北朝鮮側が提
示した安否不明者10名に関する「証拠」も次々と疑問点が明らかになっている。

 このような信義にもとる不誠実な対応をとる金正日政権に対し、本年5月、小
泉総理は、自ら北朝鮮を「電撃訪問」し、人道支援の再開を表明したほか、20
02年9月の「平壌宣言」を順守していく限り、日本は経済制裁を発動しないと、
約束してきた。

 民主党は、拉致事件の真相究明に関する北朝鮮側の対応は、明らかに「平壌宣
言」に違反するだけでなく、問題解決の姿勢を全く欠く不誠実な対応であると主
張し、次の措置をとることを政府に強く要求する。

1.拉致事件について、北朝鮮側が提示或いは伝えてきた情報を速やかに開示し、
様々な角度からの安否不明者及び特定失踪者に関する情報の分析を可能とするこ
と。

2.今回の虚偽の「証拠」提示を受け、本年5月より再開されている人道支援の
うち、まだ実施されていない残りの12.5万トンの食料(総量25万トン)及
び300万ドル相当(総額1000万ドル)の医薬品について、直ちに「凍結」
することを北朝鮮側に明確にすること。

3.安否不明者10人及び特定失踪者の情報などに関して期限を区切って再回答
を求め、納得が得られなければ段階的に経済制裁を科していくこと。その際、出
来る限り、関係諸国と連携した措置がとれるよう外交努力を強化すること。

4.「北朝鮮人権侵害救済法案(仮称)」の成立に向けた取り組みなどを通して、
拉致事件という重大な人権侵害に関する国際社会の理解を得ていくこと。

5.国連に対して拉致事件の早期解決を促すなど、更なる国連の関与を求めてい
くこと。今後、北朝鮮が拉致事件の全面解決に非協力的な姿勢を続ける場合、わ
が国による段階的な制裁の発動と併せて国連安保理に対して北朝鮮への経済制裁
を求めていくこと。

6.将来的には、六者協議を発展させて、「北東アジア・フォーラム(仮称)」
を設置するなど、北東アジア地域の平和と安定を醸成する枠組み作りを進めてい
くこと。
 以上、決議する。
...............................................

http://www.sukuukai.jp/houkoku/log/200412/20041214-3.htm


【参考資料3】 自由法曹団の北朝鮮経済制裁反対声明 
対北朝鮮「経済制裁」の発動に反対し平和的解決を求める声明

1 横田めぐみさんらのものとされた遺骨がDNA鑑定で別人とされたことにより、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対する「経済制裁」が声高に叫ばれ、去る12月10日には衆議院拉致問題特別委員会が、14日には参議院拉致問題特別委員会が、拉致問題の解決のために経済制裁の積極的発動を検討する決議をそれぞれ可決した。

2 北朝鮮は、それまでの調査の誤りを認め、金正日国防委員長自ら「白紙の状況で再調査」することを約束しながら、拉致された被害者のものとして日本側に別人の遺骨を提供してきた。こうした北朝鮮の態度は、不誠実きわまりないものと言わざるをえない。こうした事態を一日も早く打破し、問題を解決するためには、動かすことのできない事実を明らかにし、道理をもって、真相の解明を北朝鮮に迫るべきである。私たちは、不屈に、そしてねばり強く、平和的解決を求める立場を貫く交渉こそ、平壌宣言の誠実な履行であり、問題解決の唯一の道であると確信する。

3 もともと経済制裁は、他国に対する「力」の行使であり、いま、声高にいわれている北朝鮮に対する経済制裁も、送金の停止や輸出入の制限、船舶の入港禁止、人道支援の凍結などいずれも重大な力の行使である。これは、日朝間の往来や生活品等の輸送、制限をともなうものであり、その被害が民衆に大きく及ぶ危険は現実のものである。イラクのフセイン政権に対する長期にわたる経済制裁が、病人や子どもたちに犠牲をもたらしただけであったという教訓にてらせば、北朝鮮に対する経済制裁はきわめて非人道的手段といわざるをえない。

4 北朝鮮の今回のやり方が、不誠実だからといって、こうした「力」の行使に及ぶことは問題解決にとっても二重に誤っていると私たちは考える。
一つは、そもそも「改正」外為法にしても特定船舶入港禁止法にしても、拉致事件の解決に発動されうる構造にはなっていない。すなわち、両法律も「我が国の平和およ、び安全の維持のため特に必要があるとき」とあるように、制裁発動の法律上の要件は、日本という国家の平和や安全上において看過しがたい事態であって、かつ、特別の必要のある場合に限定されている。北朝鮮の不誠実な交渉態度を理由にして経済制裁に踏切ることは、外為法や特定船舶入港禁止法にも違反する違法な制裁となる。相手が違法な行為をしたから、こちらの法をまげて力の行使をするということは、私たちが相手の言いがかりを許さずに堂々と交渉する力をかえって弱めることになろう。
もう一つは、現実の問題として、交渉の「場」を狭め、場合によっては、道を閉ざすことになる危険が強いということである。経済制裁を発動し、あるいは発動すると威迫することは、拉致問題解決交渉のための窓口である日朝実務者協議の場を閉ざす危険がある。さらに、北朝鮮に対する経済制裁は、新たな緊張を東北アジアに持ち込むことにもなり、ひいては6カ国協議の枠組みそのものを危うくさせるおそれすらある。

5 自由法曹団は、拉致問題の平和的な解決に全力をあげて取り組むことを訴え、あらためて経済制裁の発動に反対する。

2004年12月18日
自由法曹団常任幹事会
...............................................

http://www.jlaf.jp/jlaf_file/041228keizaiseisai.pdf



  議論・資料集2 ('04年12月下旬の状況)


【対北朝鮮経済制裁】AMLでの議論 
投稿者:まこと@出先  投稿日:12月12日(日)07時59分49秒
「あの」AMLで対北経済制裁の是非について議論が始まっているので、参考までに紹介します。

Subject: [aml 42088] 救う会からのよびかけ「今こそ経済制裁を!あなたの声を首相官邸に」
From: 横山 恵
Date: Wed, 8 Dec 2004 20:37:23 +0900 (JST)

http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42088.html

Subject: [aml 42095] Re: 救う会からのよびかけ「今こそ経済制裁を!あなたの声を首相官邸に」
From: hagitani ryo
Date: Thu, 9 Dec 2004 01:31:24 +0900

http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42095.html

Subject: [aml 42110] Re: [aml 42087] 横田めぐみさん「遺骨」捏造に対する家族会(横田滋代表)ほかの声明文(12月8日)
From: motoei@sainet
Date: Thu, 9 Dec 2004 21:06:38 +0900

http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42110.html

Subject: [aml 42124] Re: [aml 42095] Re: 救う会からのよびかけ「今こそ経済制裁を!あなたの声を首相官邸に」
From: JAWAY
Date: Fri, 10 Dec 2004 21:47:11 +0900

http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42124.html

Subject: [aml 42139] ●「経済制裁」論議に反対する
From: "Kenju Watanabe"
Date: Sat, 11 Dec 2004 22:54:51 +0900

http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42139.html

Subject: [aml 42140] Re: [aml 42124] Re: [aml 42095] Re: 救う会からのよびかけ「今こそ経済制裁を!あなたの声を首相官邸に」
From: JAWAY
Date: Sat, 11 Dec 2004 23:46:59 +0900

http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42140.html

Subject: [aml 42141] Re: [aml 42095] Re: 救う会からのよびかけ「今こそ経済制裁を!あなたの声を首相官邸に」
From: hagitani ryo
Date: Sat, 11 Dec 2004 23:52:44 +0900

http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42141.html

Subject: [aml 42142] Re: [aml 42095] Re: 救う会からのよびかけ「今こそ経済制裁を!あなたの声を首相官邸に」
From: JAWAY
Date: Sun, 12 Dec 2004 00:17:28 +0900

http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42142.html

「ひのもと政策」(日本型太陽政策)を提唱する
投稿者:南雲和夫  (「さざ波通信・北朝鮮問題討論欄」、12月21日投稿)

「ひのもと政策」(日本型太陽政策)を提唱する―日朝関係打開へ向けて

1. はじめに

 現在、日本と北朝鮮との間の関係は、拉致問題をめぐる北朝鮮側の拙劣な対応と、日本国内における感情的な反感とがあいまって、戦後最悪といってもよい状態にある。勿論、拉致問題を初め、いわゆる「不審船」問題、「テポドン」ミサイルの発射実験などなどに至るまで、主として関係悪化の原因は北朝鮮政府にあるのはいうまでもない。しかしながら、戦後60年近く経過し、いまだに直接の戦闘を交えたこともなく、又東アジアで韓国とともに国際連合に加盟している北朝鮮と日本が、未だに国交はおろか非公式な形での外交交渉の機関を設置していないのは異常というより他はない。
 さらに、拉致問題をめぐって被害者の家族や、又これらと連携している「救う会」幹部や、いわゆる政権与党の少なからぬ議員より、「経済制裁」「金正日政権打倒」などが主張されている。しかし、世界のどんな性格の政権であれ、その国の政治の誤りを正すのはその国の国民であり、またある国がテロ、または国家規模で行った犯罪を糾すのにその国の政権を転覆することが正当化されるのであれば、国際秩序は崩壊し、人類が多年にわたって築きあげてきた国際法体系も意味を一切なくしてしまうであろう。
 また、現在の北朝鮮の政治体制を見るとき、いわゆる「経済制裁」が及ぼす影響は、少なくとも少数の国家の指導層(そしてその恩恵を受けている階層)にいくことは考えにくい。逆に、現在の政権の内部でむしろ抑圧、ないしは阻害されている階層にその被害が及び、かえって現在の政権の基盤を強化する―すなわち、日本側の対応にこそ問題があるという、権力側の宣伝に一定の真実性を与える―という方向へつながりかねない。これでは、民主化を願う北朝鮮の一般民衆はもちろんのこと、日本国内で民主化を願う多くの良心的な在日朝鮮人にも、かえって悪影響を与えてしまうことになるだろう。

 本稿では、こうした現状を打開するための一つの試みとして、日本型「太陽政策」−「ひのもと政策」の提案を行いたい。これは、勿論一種の「たたき台」であるため、多くの民主的な活動家、市民、知識人・文化人の積極的な討論・議論が望ましいことは言うまでもない。忌憚のないご意見・ご提案をいただければ幸いである。

2. 日本と朝鮮半島の間に存在する「戦後処理」について

@ いわゆる従軍慰安婦問題、強制連行労働者の問題、文化財の問題
・ これらの問題については、引き続き日本国内にある関係官庁の資料、及び情報公開を実施させ、それに基づいていわゆる個人への補償、および未払い賃金の支払い、そのほか遺骨の返還、などといった処置を行う必要がある。
・ なお、北朝鮮から持ち出され、破壊されたといわれている文化財については、引き続き関係各団体と連絡を取り、真相解明と原状回復、または補償を行う。

A 第二次世界大戦中の国家賠償について
・ 基本的には、「日朝ピョンヤン宣言」の精神をもとに解決していく方向で対応する。ただし、後述するような形で社会資本の整備については円借款の形態よりも、無償援助協力の形態で行う。

3. 日本人拉致問題について

@ いわゆる日本人拉致の真相解明と、その被害の実態、及び生存する被害者の帰国へ向けて、引き続き外交交渉を行う。なお、その際には北朝鮮側の軍部が掌握している「特殊機関」の当時の責任者、関係者を含めて、関連する物証、そのほかの資料をあらためて提出することを求める。
A すでに帰国している拉致被害者については、その家族も含めて北朝鮮当局に対して精神的・身体的苦痛を配慮した形での個人補償を求める。この場合、実質的な「原状回復」は不可能なため、金銭的解決が中心となるが、そのほかにも、被害者当人が望む形での「賠償」があれば、北朝鮮側に応じるよう働きかける。
B このほか、現在北朝鮮が公式には否定している「拉致被害者」についても、前述のように再度関係当局者に働きかけ、再々調査を行うよう要求する。
C 北朝鮮側に拉致の実行犯として現在生存している関係者については、引き続き引渡しを要求し、日本国内での刑法によって裁判を受けるよう要求する。このほか、拉致事件に関わったとされる特殊機関を含めた関係者についても同様の要求を行う。

4. 日朝国交正常化について

@ これについては、可及的速やかに「宣言」の精神にのっとり再開し、早急に連絡所、及び大使館級の外交連絡事務所を設置する。
A さらに、国交樹立後、北朝鮮の主要都市に、出来るだけ速やかに領事館、連絡事務所などを建設し、また将来進出が予想される日系企業のために日本人学校、及び宿舎などの建設を早急に行う。

5. 核開発問題について

@ いわゆる北朝鮮の「核開発」問題については、引き続き周辺諸国との「六カ国協議」を継続するとともに、KEDOによるエネルギー援助活動の再開を行うよう関係各国に働きかける。
A なお、日本国内に度々寄港する米軍艦船については、かつての「神戸方式」の方法を踏襲し、核兵器を保有した米軍艦船が一切入港できないようにする。

6. 北朝鮮への援助について

@ 現在凍結されている食料・医療援助については速やかに再開する。また、今後不足されると予想されている食糧については、引き続き現物支給を前提に国際機関などの援助・協力も得てモニタリングを前提にした形で、食糧事情が悪化している地方への援助を中心に行う。
A 医療そのほかの援助活動のため、日本赤十字社、赤十字国際委員会などを通じた医療支援ボランティアを募り、現地での診療活動を進める。その際、日本側より支援センターの設置、活動スタッフのための資金を提供する。民間のNGOとも協力し、もっとも緊急に援助が必要な高齢者、乳幼児、障害者などへの対策を早急に進める。
B 国内のインフラストラクチャーの整備などは、円借款の形態ではなく、極力無償援助の形で行う(主に病院、診療所、教育機関など)。その際、現場の仕事には極力現地の住民を採用することが出来るよう、北朝鮮側に働きかける。

7. 文化活動の交流

@ 対外文化協会などの協力も得て、日本側の文化交流弾を組織する。ピョンヤンを中心に、各地で日本文化交流の集いや、日朝文化交流の夕べなどを行う。そのための「日本文化センター」の設立は必要不可欠である。
A 在日朝鮮人、日本人の文化団体・個人とも協力し、常駐的な文化団体の連絡事務所を設置する。
                                             (以上)

【編集者注】 以上の投稿は、南雲和夫さんが「さざ波通信」に投稿した論考を、ご本人の了解を得て本欄に全文を転載しました。転載に際しましては、いくつかのスレッドを1つにまとめ、また読了の便宜も考慮して改行等の必要最小限の編集を加えています。


【対北朝鮮経済制裁】AMLでの議論(2) 
投稿者:まこと@帰宅前の一服  投稿日:12月25日(土)09時00分26秒
連続投稿になりますが、申し訳ありません。以前、AMLでの対北経済制裁論議を紹介しましたが

>【対北朝鮮経済制裁】AMLでの議論 投稿者:まこと@出先  投稿日:12月12日(日)07時59分49秒
http://afghan2004.hp.infoseek.co.jp/kakolog65.htm

この後、議論は拉致問題や北朝鮮の体制問題に波及しているようです。以下、北朝鮮絡みのAMLの投稿にリンクを張ります。AMLは投稿文中に「転載不可」と掲載されているもの以外は、原則として転載・転送は自由とされているので、こちらで紹介することに特に問題は無いものと考えます。

なお、経済制裁問題について、12月23日付け「東京(中日)新聞」が、この問題を比較的冷静に扱った記事を載せているので、併せて紹介したします。

「対北朝鮮経済制裁論 政府の覚悟と準備は?」(東京(中日)新聞 04.12.23)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041223/mng_____tokuho__000.shtml

Subject: [aml 42145] Re: [aml 42140] Re: [aml 42124] Re: [aml 42095] Re: 救う会からのよびかけ「今こそ経済制裁を!あなたの声を首相官邸に」
From: motoei@sainet
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42145.html

Subject: [aml 42150] 「5055」というコードネーム
From: かば
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42150.html

Subject: [aml 42168] RE:大詰めの鄭香均裁判
From: "half-moon"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42168.html

Subject: [aml 42170] 自民・民主両党の拉致問題対策本部が解決に向けて議決
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42170.html

Subject: [aml 42173] 「国交交渉を急げば拉致被害者は強制収容所送り」との証言
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42173.html

Subject: [aml 42179] Re: 自民・民主両党の拉致問題対策本部が解決に向けて議決
From: hagitani ryo
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42179.html

Subject: [aml 42181] 元『赤旗』平壌特派員が「北朝鮮飢餓は金正日が仕組んだ大量殺戮」と指摘
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42181.html

Subject: [aml 42182] 北朝鮮に対する経済制裁に反対します!
From: "Kensaku Kawauchi"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42182.html

Subject: [aml 42186] Re: [aml 42182] 北朝鮮に対する経済制裁に反対します!
From: motoei@sainet
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42186.html

Subject: [aml 42187] 「「進歩派」にこそ読んでほしい」と高世仁氏が呼びかけ
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42187.html

Subject: [aml 42188] 西岡力氏が「北朝鮮国民に被害が及ばないやり方で、経済制裁を行なう方法」を提案
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42188.html

Subject: [aml 42190] Re: 西岡力氏が「北朝鮮国民に被害が及ばないやり方で、経済制裁を行なう方法」を提案
From:高橋亨
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42190.html

Subject: [aml 42192] 日本共産党が経済制裁容認に転換
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42192.html

【対北朝鮮経済制裁】AMLでの議論(3) 
投稿者:まこと@帰宅前の一服  投稿日:12月25日(土)08時57分25秒
Subject: [aml 42200] 日本共産党の志位和夫委員長が「制裁もありうる」と明言
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42200.html

Subject: [aml 42209] Re: [aml 42200] 日本共産党の志位和夫委員長が「制裁もありうる」と明言
From: "makochi"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42209.html

Subject: [aml 42217] 社民党の又市征治幹事長が、「制裁措置も選択肢の一つ」と公言
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42217.html

Subject: [aml 42218] 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42218.html

Subject: [aml 42222] アムネスティの北朝鮮報告書が刊行されました
From: "SAKAI Takayuki"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42222.html

Subject: [aml 42228] 経済制裁の次に来るもの
From: donkobune@peg
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42228.html

Subject: [aml 42233] 「横田めぐみさん拉致は待ち伏せ」との情報
From: 横山 恵
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42233.html

Subject: [aml 42237] Re: 「横田めぐみさん拉致は待ち伏せ」との情報
From: 野崎 優子
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42237.html

Subject: [aml 42238] 北朝鮮への経済制裁は解決の糸口にならない。
From: 野崎 優子
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42238.html

Subject: [aml 42243] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: 高橋亨
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42243.html

Subject: [aml 42244] 金正日政権は民主化と改革・開放を行え
From: "YOSHIDA, Hiroshi"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42244.html

Subject: [aml 42245] Re: [aml 42243] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: "Muraoka Itaru"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42245.html

Subject: [aml 42249] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: "YOSHIDA, Hiroshi"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42249.html

Subject: [aml 42250] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: JAWAY
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42250.html

Subject: [aml 42253] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: 高橋亨
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42253.html

Subject: [aml 42254] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: "YOSHIDA, Hiroshi"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42254.html

Subject: [aml 42256] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: 高橋亨
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42256.html

【対北朝鮮経済制裁】AMLでの議論(4) 
投稿者:まこと@帰宅前の一服  投稿日:12月25日(土)08時53分25秒
Subject: [aml 42257] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: 高橋亨
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42257.html

Subject: [aml 42259] ●“朝鮮侵略100年”を問う2005年運動に参加・賛同を
From: "Kenju Watanabe"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42259.html

Subject: [aml 42262] 朝鮮民主主義人民共和国に対する「経済制裁」に反対する声明
From: 加賀谷いそみ
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42262.html

Subject: [aml 42265] Re: 福島みずほ社民党党首も「経済制裁も選択肢の一つとして排除をしない」と明言
From: "YOSHIDA, Hiroshi"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42265.html

【注目!】Subject: [aml 42274] 経済制裁という「論点」
From: "Kawasima Takane"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42274.html

Subject: [aml 42276] Re: 経済制裁という「論点」
From: "YOSHIDA, Hiroshi"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42276.html

【注目!】Subject: [aml 42280] 拉致問題に関して
From: kolinko(コリン・コバヤシ@グローバル・ウォッチ)
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42280.html

Subject: [aml 42281] Re: [aml 42280] 拉致問題に関して
From: "Kenju Watanabe"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42281.html

Subject: [aml 42283] Re:拉致問題に関して
From: "YOSHIDA, Hiroshi"
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42283.html

Subject: [aml 42285] Re: [aml 42283] Re:拉致問題に関して
From: motoei@sainet
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42285.html

Subject: [aml 42286] Re: [aml 42285] Re: [aml 42283] Re:拉致問題に関して
From: motoei@sainet
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42286.html

Subject: [aml 42293] Re: 拉致問題に関して
From: kolin kobayashi
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42293.html

Subject: [aml 42301] Re: [aml 42299] Re: 拉致問題に関して
From: motoei@sainet
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42301.html

Subject: [aml 42307] Re: 拉致問題に関して
From: hagitani ryo
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42307.html

Subject: [aml 42310] Re: [aml 42299] Re: 拉致問題に関して
From: kolinko
http://www1.jca.apc.org/aml/200412/42310.html

超・左翼さんへ−北朝鮮経済制裁&共産党の決議賛成の件 
投稿者:社会主義者  投稿日:12月25日(土)02時05分25秒
> バッジ様と社会主義者にお聞きしたい 投稿者:超・左翼  投稿日:12月24日(金)20時19分2秒
>>あなたがたはこの共産党の方針変更をどう評価しますか、率直な評価を教えていただきたい。<<

 私は今まで、「救う会」が推進している北朝鮮経済制裁については「保留する」と表明してきました。それは今も変わりません。従って、その経済制裁に共産党が賛成した事に対する評価を私に求められても、答えようがありません。それでも敢えて言えというなら「保留する」という事になるでしょうね。

 私が何故この問題について「保留」するかといえば、簡単に結論が出る問題ではないというのが第一点、この問題については当掲示板の常連の間でも賛否が分かれており、徒に先走って結論を出したり各人に踏み絵を迫ったりするのではなく引き続き常連の間で議論を継続していけば好い、それよりも上掲の掲示板テーマに沿って「リベラルな立場から北朝鮮の人権問題にコミット」していくという事を追求していきたいというのが第二点、以上二点の理由からです。

 「救う会」や自民党の北朝鮮経済制裁プロジェクトチームが推進している形での経済制裁については、私は次の二点について懸念を持っています。

(1) 特定船舶入港禁止法の中に所謂「再入国禁止」条項があり、これによって北朝鮮に渡航した在日朝鮮人が「北朝鮮工作員」と認定され日本再入国が認められなくなる可能性がある訳ですが、何を以って「北朝鮮工作員」と認定するかの基準が曖昧な事。
(2) 人道援助の一律凍結に対する懸念。人道援助については、金正日政権の延命に繋がるという一面と、北朝鮮に渡った在日帰国者や日本人妻にとっては命綱となっているというもう一面の二面性があり、それが分かち難く結びついてしまっている。その命綱を簡単に切って好い物か−という懸念。

 しかしその一方でまた、人道援助が金正日政権の延命を支えている一面がある事も事実であり、徒に経済制裁に反対するだけの立場にも私は賛成できません。「制裁か、そもなくば援助か」という単純な二者択一ではなく、「帰国者や北朝鮮人民が犠牲になる事を最小限に食い止め、金正日一味に打撃を集中するような制裁」が追求できないかと考えています。例えば、北朝鮮産アサリの輸入禁止によって北の人民がアサリの飢餓輸出から解放するとか、贅沢品に限定した経済制裁とか、あるいはコカンホさんが実践している様な、支配層のストックになりかねない食糧援助は凍結して直接人民を支援する形の医療援助は継続する−とか。

 バッジさんが言われた様に「北朝鮮問題には隘路しか存在しない」。その中でも、出来るだけ人民の犠牲を食い止め金正日体制そのものに打撃となるような方策を検討すべし−というのが現時点での私の考えです。「制裁か援助か」という二者択一で「人命の収支決算」「大の虫を生かすために小の虫を殺す」という論理を当事者に強要する権利は誰にも無いと思います。

社会主義者さん、超・左翼さん 
投稿者:バッジ  投稿日:12月25日(土)07時22分9秒
社会主義者さん、大分ギャラリーを意識して書きましたね(笑)
私も、経済制裁問題は「ニセ問題」だ、と考えるようになりました。この問題について必要以上に声を荒げるのは、「無能・無策の証明」です。議論が列島を席巻することは、金、佐藤両極の思う壺でしょう。ご指摘のように、「制裁」と「支援」の間には、「対立物の同一性」「相互浸透」(三浦さん、ゴメン)が見受けられますから(笑)。

超・左翼さん、緊急性を要するという課題性格から誤りを恐れず暫定的結論を書きます。

「拉致問題に絞って、金正日と取り引きせよ!」 これに尽きます。

ナゼ拉致問題が解決しないのか? その最奥(究極的原因)に、金正日個人の強い保身願望があります。「ならず者国家」認定の根拠とされた対韓航空機爆破の隠蔽による「国家の対面保持」説などは、いまさらバレバレの意味無しフレーズ探しでしかありません。
特殊機関の責任者であれ、ジョンイルであれ、被害者全員を帰国されば(全容解明を付加条件としても良い)、「一切その責任を問わない」と取り引きを持ちかけるべきべきです。もちろん、アンダー・ザ・テーブルでです。拉致問題では、9,17以来、右から左まで「原状回復」「全容解明」「再発防止」「責任者の処罰」を掲げてきましたが、この原則固執(タテマエ論)が自らの首を絞めてしまっていることも否めません。「進駐軍」の対天皇政策や米軍のジェンキンス問題処理を想起してください。人類の狡知は「取り引き」を必要悪として容認してきました。

ただし「取り引き」は、拉致問題に限ってです。
金独裁の国内抑圧問題解決から「北」の体制転換の課題については、別途詳論します。

書き忘れ 
投稿者:バッジ  投稿日:12月25日(土)07時46分36秒
共産党の経済制裁問題での転向は許せません。一般人やブルジョア政党の対応ならいざ知らず、国家とは何たるかについての理解が当然あるはずの左翼には、資本の国家の対外的国権発動がいかなる意味をもつかはイロハのイではないでしょうか。

それと、「制裁」にしろ、「支援」にしろ、北朝鮮人口の5%以上を占める人民軍についてもっと知り、考えるべきでしょうね(私も受け売りでスマソ)。

人民軍には「二重の二重性」???があります。
まず、1)権力の暴力装置であり、かつ「北」の民衆の(民衆による)部隊でもあるという点。
そして、2)金正日独裁の権力基盤であると同時に「妄動分子」としてのスケープゴートでもある点。

これをいかにして改造、縮小、解体するかに「北」の体制転換の正否がかかっています。

彼等は先軍思想でマインドコントロールされ、故郷から遠く離れた地へ配属されることによって、凶暴で人民(地域住民)から遊離させられた人民であり、困窮しています。

北朝鮮経済について参考までに(1) 
投稿者:三浦小太郎  投稿日:12月28日(火)16時41分0秒 (「沢村板」の投稿より)
以下,「北朝鮮Q&A」亜紀書房 からの引用です。

Q:北朝鮮の経済構造はどうなっているのでしょうか?

A:北朝鮮の経済構造は、近代国家の中でも、きわめて特異なものです。普通国家の経済構造は、第一次・第二次・第三次産業が、相互依存・関連して一国経済を成立させます。しかし、北朝鮮ではこうした産業部門間連関が欠落し、独自な横割構造が上下に積み重なる不思議な仕組みになっています。

特異な三段階横割り上下経済
(1)「第一経済」が、政務院管轄の一般経済部門で、経済計画の遂行と民生に責任を負っています。道管轄の地方産業工場もこれに含まれます。政務院には、十五の委員会、十九の部や銀行・商社などが所属します。(九三年現在)。部は日本の各省に当り、委員会は傘下各部を統括する大きなものです。これら各部・委員会や各道は、それぞれ物資を自己調達する必要に迫れ、独自の貿易商社を持っています。また、この政府各省を指導する党第一経済部各セクションがありますから、二重の極めて巨大な官僚機構になります。また各道・市・郡には「行政・経済指導委員会」が設置されています。

(2)「第二経済」が軍事経済部門で、政務院の上位に立つ大規模な「第二経済委員会(国防委傘下)」に管轄されています。この部門は、独自の銀行(龍岳山・金剛銀行など)と商社(龍岳山・烽火など)を備えて、人民軍の装備や兵站を賄うとともに、電力・石炭・鉄鋼・機械など基幹産業要部門の中枢企業を独占しています。兵器関係の輸出入もこの部門が取り仕切るため、北朝鮮経済の大半を占めるといわれています。

(3)「第三経済」は、「党経済」とも呼ばれ、金父子一家と、高級特権幹部(党・軍・政)の経済です。これを取りしきるのは、「三九号室」という非公式の機関です。工場・企業所・事業所・農場などに九号(金父子用)、八号(特権幹部用)物資を特別生産させる職場や圃場を設置し、最上の原料・資材・労働力を投入した特上品を生産させています。これ以外にも「一号物資」という金父子が独占して自由に動かせる物資があり、外国人賓客接待用や人民・功労者への贈物・勲章などに使われます。この部門も、独自の銀行(大聖銀行、金星銀行(在ウィーン))や商社を直轄し、外交官が密輸などで入手した外貨を吸い上げるなど独自な経済活動を営みます。
 以上のうち、第二〜第三経済が経済の優先部分を占めているので、第一経済が圧迫されています。特に九〇年代のように、社会主義陣営の崩壊により経済全体が縮小傾向に陥ると、そのシワヨセがすべて第一経済にきて、真先に民生関係が犠牲にされます。六〇年代以後の経済計画が相次いで失敗し、政務院総理がその度に更迭されたのも、第二・第三経済優先のためで、最近伝えられる人民生活の窮乏・飢餓状態もその結果です。

膨張する闇経済−「第四経済」
人民も必死に生きるために、闇経済が蔓延します。この闇経済を「第四経済」と呼ぶこともできましょう。最近では、闇経済が人民生活の八〇%を賄うに至ったともいわれます。この闇経済の源資はどこから来るのでしょうか。第一は中国からの流入物資、第二は日本からの流入する物資、第三は国内での横領・横流し物資です。中国(特に延辺朝鮮族自治州)からは、親族訪問者や闇商人が食料品・日用品を運び込みます。日本からは、帰国者親族への送金・物資と、短期訪問団の携帯する金と物資、朝総連系商工人たちが献納した愛国工場・商店や合弁企業を通じて流入する物資があります。第三の官庁・軍隊・工場・商店の保有物資の横領・着服・横流しも日常化・大量化しています。九〇年代に入ると、勤労者・兵士たちも、職場・部隊の物資を持ち出して食料や日用品に換えることが当然化しました。窃盗・強盗やワイロ現象も日常化して、全国の行政と経済を底辺から侵食してきました。社会が底辺から腐敗・麻痺し始めるとともに、金父子の権威も失墜しつつあります。

北朝鮮経済について参考までに(2) 
投稿者:三浦小太郎  投稿日:12月28日(火)16時42分22秒 (「沢村板」の投稿より)
(1)の文章は1993年に北朝鮮研究者によって記されたものですが、現在はさらにこの傾向は加速されているものと思われます。
まず、闇経済(第4経済)の成長と、逆に第1経済(政府による民生部門の計画経済)の縮小。北朝鮮では現在、各人の「自由経済」が認められ、つまり各国民が生活は自らの力で切り開くことが要求されています。しかし、この傾向は「改革開放」どころか、農業、工業共に復興の見通しのない中で単に民衆を見捨て、軍、党幹部、秘密警察など特権層・忠誠階層に直接影響する、上記の「第2・第3経済」だけを守るものでした。現在、脱北者から伝えられる北朝鮮国内のハイパーインフレの実態は、李英和氏の伝える所では下記のような情勢です。

北朝鮮における米の値段の推移
2003年7月1日  この時期金正日が経済の自由化、改革を発表する
           米1キログラムはこの時点で40ウオン
     9月                 180ウオン
2004年1月                 300ウオン
     3月末                400ウオン
     7月                 500ウオン
     8月初めから           700から900ウオン
     9月                 1400ウオン
まさに、ハイパーインフレと言う言葉では収まらない数字だ(トウモロコシの値段は約この半分)。値段が上がる理由は、単に物が足りないからではない。国際的な支援物資は党幹部(秘密警察などを含む)、軍、政権幹部にしか配られず、その余剰が自由市場に流れる。直接庶民の手に届く事はない。さらに通貨が乱発され、物価が上がれば上がるほどさらに乱発を繰り返すと李代表は言う。殆ど悪循環と言うより、「生産」が農業も工業も再生不可能になった国と国民の悲劇である。(RENK東京サイトより引用)

北朝鮮への経済制裁がどの程度効果があるかについては色々と議論のあるところですが、ここでは様々な数字上の議論は専門家ではない私は控え、最低限の原則論を述べておこうと思います。
私見では、第2経済及び第3経済にあたる対日貿易(軍事用製品の輸入、食料品貿易による対日輸出:これがよく言われるアサリとかズワイガニ、労働党幹部用のぜいたく品の輸入など)をストップさせる事は、北朝鮮に対してわが国のテロ武装も労働党による民衆搾取も許さないという意志を伝えるためには効果のある事例ではないかと考えます。国際社会に対しても、拉致被害者の救出と同時に、このような日本との対北貿易が、現北朝鮮独裁体制によって悪用され、民衆ではなく労働党幹部の忠誠をつなぎとめる事と、テロ国家の武装強化に繋がっている以上、停止する事が平和と人権改善への道であるという、日本政府の堂々とした声明が必要ではないかと思います。

また、経済制裁が民衆を苦しめる可能性ですが、私は勿論それを完全には否定しません。第4経済、つまり民衆の自由市場が事実上民生の根本をなすようになった以上、例えば在日帰国者家族からの送金が完全に途絶えた場合、北朝鮮帰国者や日本人妻の家庭は打撃を受けるでしょう。しかし、それは逆に、日本政府が北朝鮮政府に対し、彼らが人間的に生活できるよう人権抑圧を改め、国民が餓死しても、(1)における第1経済を放棄し、民生を省みず、軍部と党幹部だけを守ろうとする経済そのものを改めさせる事が真の人道支援ではないでしょうか。今後永遠に、在日帰国者は北朝鮮に「人質」として悪用され続けなくてはならないのですか。帰国者の在日家族は、ひたすら万景峰号を通じて北朝鮮政府に縛られ、総連に縛られ続けなくてはならないのでしょうか。万景峰号こそは、ある意味で、在日を北に縛り付ける「奴隷船」なのです。

「脱北者保護」「北朝鮮独裁政権への人権改善要求」という、北朝鮮民衆への「飴」
そして、「経済制裁」と「国連安保理をにらんだ国際世論による包囲網」という、金正日への「鞭」
こういうのを本当の「飴と鞭」のあり方なのでは・・・
 むしろ、私は経済制裁が第3国を通じて金銭の流れ等を完全に停止できるかどうかのほうがやや疑問があり、ここは経済専門家による緻密な制裁案を出して欲しいと思っています。

【編集者注】 以上2稿「北朝鮮経済について参考までに」(1)(2)は、三浦小太郎さんが「沢村板」(掲示板 声よ届け!波濤の彼方へ)に投稿した論考を、本欄にそのまま転載しました。転載に際しましては、日頃からご本人の了解を得ています。

対北朝鮮経済制裁への見解-1 
投稿者:原 良一@遅刻だ(汗)  投稿日:12月29日(水)13時24分56秒
 まこと(元M)様

 改めてamlの資料提供ありがとうございます。川島高峰氏の主張は、金国雄さんの梁山泊の紹介で拝読していましたが、コリン・コバヤシ氏の長文は見ていなかったので勉強になりました。それらも踏まえ、私も対北朝鮮経済制裁への見解を述べます。かなり過激なことを書いていて袋叩きは必至、充分練れてないところもあるけれど、もう時間がないので追い追い補足します。

 先に結論

 私は、拉致問題の解決は、経済制裁もしくはその発動を表明しての恫喝という物理的圧力なしには実現し得ないとの「経済制裁不可避論」に立つ。以下にその根拠を示す。

  1.拉致問題解決に王道無し

 別に北朝鮮に限らずとも、国家権力がこの種の人権侵害を犯すのは数限りなくある。そして被害者側が、その犯罪を認めさせ、謝罪や賠償の実現にまで漕ぎ着けられた例はごくわずかしかない。

 それを考えれば、宥和政策を採ろうが、経済制裁を含む強硬策で臨もうが、金正日が死なない限り、下手をすれば死んでも、失脚しても拉致問題を含む北朝鮮の人権問題の早期で容易な解決は難しい、ということを覚悟して取り組むべきである。
 
  2.宥和政策の限界性

 韓国による北朝鮮に対しての太陽政策にしろ、日本に対する大衆文化開放政策にしろ、宥和政策は、交流や通商の拡大を通じて緊張の緩和、友好関係の醸成などには一定の成果はあるが、係争事項などの懸案事項の解決には繋がらないのが普通である。ましてや国家犯罪や戦争行為の結果生じた既成事実の原状回復には、まったく無力である。

 早い話が、日韓両国で百万単位の人々が行き来し、W杯の共催が成功裡に終わり、ヨン様ブームが起きようと、慰安婦問題など過去清算では何らの進展もないし、金大中拉致事件の真相解明も進まず、竹島は韓国に占領されたまんま…。韓国も太陽政策であれだけ北朝鮮に貢いで人的交流も拡大したのに、韓国人の拉致被害者を(自力で逃げた人を除いて)北朝鮮から一人も奪還できてはいない。

 まず国交を結び、交流を拡大すれば、拉致問題は自ずと解決するというのは、幻想もしくは欺瞞でしかない。なぜなら、拉致問題を解決しなくても、被害者を返さなくても国交回復に伴う実利を得られるのなら、北朝鮮側にそれを解決しなければならないインセンティブ(動機)が生じなくなるからである。

 そもそも宥和政策は、係争事項とそれを引き起こした側の責任を棚上げ&不問にして、交流拡大による実利を優先させようというものであるから、既成事実をでっち上げている側に有利に働く。そして被害を受けている側も、緊張緩和などの実利が大きくなってくると、それを受容してしまい、現状が固定化される傾向が強い。領土紛争ならそれでもいいだろうが、寿命のある人権問題では断じて容認できない。

対北朝鮮経済制裁への見解-2 
投稿者:原 良一@遅刻だ(汗)  投稿日:12月29日(水)13時20分37秒
  3.経済制裁の有効性とその影響

 北朝鮮においては、特権層になるほど奢侈品の購入やその資金調達のための対外依存度が高く、経済制裁の影響を受けやすい。「北朝鮮権力層にとって、経済制裁は痛いが『参った』と音を上げるほどではない」(石丸次郎氏のサンデー毎日のコラムより)との主張もあるが、痛みを与えられるなら経済制裁は行うべきである。

 経済制裁反対派からは底辺層の庶民を苦しめるだけとの批判があり、賛成派からは「人道支援」を含め経済活動は特権層を潤すだけなので、制裁をしても底辺層に影響は無いとの反論がなされている。どちらの主張にも欺瞞が含まれており、私は同意しがたい。

 私はどのように配慮しようとも、経済制裁は底辺層にも一定の打撃を与えるのは不可避と判断する(特権層と底辺層の利害の分離の不可能性)。例えば、三菱自動車こと殺人モータースや雪印こと偽印食品の企業犯罪が暴かれ、その結果当該企業の業績が悪化し、最悪倒産に到るとする。結果として犯罪や不祥事に直接責任のない多数の一般従業員が失業したり、不本意な転居を迫られたりと様々な不利益を被ることは避けられない。経済制裁が北朝鮮の底辺層にもたらす影響もこれと同じ性格を持つ。

 この時、経営陣や企業別組合とその支持者、従業員やその家族が、従業員が路頭に迷うから捜査に手心を加えてくれと懇願したとして、受け入れられるだろうか? そもそも犯罪を追及する側が、それを考慮しなければならない義務があるだろうか? 失業者に対する再就職の斡旋など事後的、対症療法的な対策は手厚く施せても、犯罪究明に伴う痛みが生じることは避けられないし、それを怖れての「臭いものにフタ」政策ももはや許されないレベルに到って事件は公然化した。拉致問題もまったく同じ構図である。

「拉致の全容が解明されても、貴方方一族の生活には何の影響も与えません。だから捜査に協力してください」と言ったらウソになる。「大きな痛みを伴います。逮捕される人も沢山出るし、それによって崩壊する家庭も出るでしょう。それでも協力してください。でないと排外感情や右傾化はさらに強まりますよ」と言わなければならない。

 私がことある毎にいう

「きれいごとではこの問題は解決できない」

はその意味である。

  4.戦争になるリスク

 経済制裁は、意図的に緊張を高めて相手国や周辺諸国に譲歩を迫る「瀬戸際政策」の日本版であり、戦後初の恫喝外交であり、一定のリスクを伴う。

 ここへきて、経済制裁を求める声が高くなった背景には、北朝鮮の軍事力の低下、特に石油備蓄の不足による継戦能力の不備という実態が暴かれ、「制裁を仕掛けても、北に戦争はできない」という判断が優勢になっている部分も大きい。

 私自身はこの点にやや批判的で、こと日本に限っては北朝鮮(より正確には工作機関が)がテロレベルの武力報復を仕掛ける危険性は相応に高まると判断している。北朝鮮の特権層、とりわけ工作機関=特殊部隊の隊員の多くが、日帝時代に迫害を受けた階層から登用されており、日本だけでなく日本人に対しても強烈なルサンチマン(怨恨)を抱くよう狂育されている。そして、実際に日本人拉致というテロ、いや戦争行為が実行され、それに罪悪感を抱いてもおらず、実行犯を国家ぐるみで英雄として遇していることがその根拠である。

 私はそのリスクを承知の上でなお、経済制裁は不可避と考える。銀行強盗の立籠もりから、ゲリラによる大使館の占拠、北朝鮮の国家ぐるみの拉致と規模の大小を問わず、人質事件は最終的にはリスクを冒しての強行突入が必須であり、またその威嚇があって初めて加害者側の「平和的」な人質の解放が実現されるのである。

 瀬戸際政策は、北朝鮮だけの専売特許ではない。拉致問題が解決しないのならば経済制裁によって北朝鮮現体制の崩壊とそれによる最悪戦争に到る混乱も辞さないぞ、との恫喝があって初めて周辺国、はっきりいえば中韓の北朝鮮への働きかけも本格化すると考える。

  5.経済制裁反対派が出すべき対案

 宥和政策推進派の本音を邪推すると、拉致問題の解決を本心から望んではいないのではないかと疑わざるを得ない。でもそれも一つの見識ではある。韓国は、日本に対する過去の清算を断念し、被害者を切り捨てることで、今日の繁栄とIMFショック後の急速な回復を可能にした。一方それに固執したから現在の北朝鮮の惨状があるという事実もある。

「10人のために戦争のリスクは冒せない。通り魔に遭ったと思って諦めてほしい」との田岡俊次氏の99年当時発言の方が余程すっきりしてはいる。対日癒着による韓国の繁栄を批判してきた人がそれを主張することへの矛盾を当方は関知しないが…。

単独経済制裁論議の「行き着く先」への懸念 
投稿者:まこと  投稿日:12月30日(木)09時43分31秒
私は本当に単独経済制裁という「手段」が、拉致問題の解決、北朝鮮の民主化の促進という「目的」に対して適切な「効果」を齎すなら「発動すべし」、こう思うわけです。しかし、

1.そもそも拉致事件が「南北対立」という東北アジアにおける冷戦構造の中で起きた惨事であるにもかかわらず、単独経済制裁という一国主義的路線に議論が傾注することによって、東北アジアでの冷戦構造の終結という課題に向けた視点や論議が等閑にされるという懸念。

2.この東北アジアの現在の外交環境は様々な国家(とりわけアメリカ合衆国と中華人民共和国)の「国益」的思惑が多層的に重なり合って形成されているにもかかわらず、単独制裁論議によってこの環境を克服するための不断の努力(とりわけ中国との関係構築)が等閑にされる、むしろ、北朝鮮が絡む問題を論議するための多国間スキーム(相当に不十分ながら六カ国協議もそのひとつ)の破壊に繋がるいう懸念。(アメリカ政府ですら、北朝鮮問題では多国間関与路線を原則としている事に注視すべき。)

3.単独経済制裁には日本国憲法という「制約」を持つ日本国が武力の代替手段として発動する「国権の発動としての報復措置」という一面もあるが、もし単独制裁で「期待」する効果が齎されなかった場合、「経済制裁ではダメだ。やはり武力を背景にして・・・」といった方向の論議に利用されるという懸念。(というより、一部の右派政治家はその辺を「織り込み済」で、なお単独制裁ムードを煽っているのではないだろうか?とすら私には思える。)

4.北朝鮮の民族主義への懸念。金正日政権の中枢部は「暴発」は即ち「自滅」の道であることを自覚していると思うが、では金正日政権に支配下にある軍や党、人民はどうだろうか?周辺諸国が対北圧迫を続ければ続けるほど、むしろ民族主義の強い北朝鮮社会の内部から自発的に(?)周辺諸国との対決路線が惹起されることはないのだろうか?とりわけ昨今は北朝鮮内部における「反革命」「反国家」的ムードの深化、ことに経済社会に関しては金正日政権中枢の歯止めすら利かない(無視している?)自発的動向が示唆されているだけに、北朝鮮における民族主義という観点から同社会内部の動向を注視する必要があるのではなかろうか?(*注)

(*注)例えば、「7.1経済改革」に関しても、金正日政権が積極的に改革路線を推進したというよりも、90年代以降の「体制に依存するだけでは食えない」軍・党関係者などよる自発的な経済活動を、政権中枢も「追認」せざるを得なかったという一面があるという分析をしている知識人もいるようです。

という事を、私は考えてしまうのです。

例えば、経済制裁推進論者である原良一さんが「善意」であることは分かっているのですが、原さんのような活動家、あるいは純粋に拉致被害者の救援を思う国民世論という「善意」が、結果として「悪意」に転化する可能性を、私は懸念しているのです。

だから、対北外交交渉での単独経済制裁カードという「ブラフ」的効果を認めつつも、実際の発動に関しては冷静かつ慎重な論議と分析が必要だと思うのです。

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