アフガン・イラク・北朝鮮と日本
ブッシュ・小泉のネオコン政治に、NO!


徒然自由通信3 
グローバル経済vs連帯経済の行方
  21 所帯じみた話 (アフガン板での鍋山さんの投稿)
                  (投稿日:2005年1月26日)

【「パッチギ」見ましょう!とりあえず(汗) kazhikさん どんな映画がいいねん!】

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10年以上前、保育園父母会の市レベルの役員をしていたのですが。
その会議は、保母や母親の愚痴も含む、いつ終わるとも知れないしんどいものでした。でも、父母会なんてそこからしかはじまらないのです。

そこに迎えた、新しい役員の父親が、会議が終わったあと、「あんな、ぐだぐだした話をしてもしょうがない。もっと効率のいい会議をやるべきだ。」と言い放った。
なんも解ってないヤツとは思いながらも、「いや、そういう愚痴も聞かないと・・・、まあまあ・・・」とかごまかして。

お引取りいただいた後、「あの人、トヨタにでも勤めてんの?」と聞くと、事務局長が「生協の職員で〜す」。「え〜〜」という声が、何人か一緒に・・・(笑)

我が家では、「ポラン広場」の八百屋を軸に、「首都圏コープ」を利用していて、たまに、「代々木系生協の店」にも行きます。「生活クラブ生協」は、その原理主義的傾向と反共主義で、ケンカしてやめました。
代々木系生協は、まあスーパーよりましだろうという感じで。
でも、行くと、「何でスーパーと同じ品揃えしなきゃあかんねん!せめて、生協開発商品だけ置けばいいじゃん!」と思う事しきり。

【「客」に、生協一店だけで買い物をすませてもらおう。多くの人に会員になってもらおう。その多くの会員の中に、共産党支持を広げよう!】という戦略なんだろうかと。

この戦略は、結局、スーパーと競うことになり、消費者運動としての【生活共同】から離れ、品質は置き去りにされ、生協職員には【効率化】が押し付けられるという構造かな。

それで、先のようなお父さんも生み出されれるのか、と思ったものです。

社会主義者さん
【「民主経営」に関わる問題もあるでしょうが、この生協戦略が違うんじゃないかと(汗)】

ポラン広場 http://www.polan.net/polanz
首都圏コープ事業連合 http://www.pal.or.jp/group/index.html

  22 生協の商品政策(原題は「Re:所帯じみた話」)
                  (2005年1月27日)

 生協経営の話をもう少し詳しく書いてみます。但し私も退職してから数年経ち、それに役職者やバイヤーではなかったので、果たしてどこまで説明できる事やら。

>>「何でスーパーと同じ品揃えしなきゃあかんねん!せめて、生協開発商品だけ置けばいいじゃん!」・・・【「客」に、生協一店だけで買い物をすませてもらおう。多くの人に会員になってもらおう。その多くの会員の中に、共産党支持を広げよう!】という戦略なんだろうかと。<<

 そういう面も、共産党から見た生協運動論としては確かにあります。謂わば多数者革命の消費者運動版として。只それ以前の問題として、そもそもコープ商品だけで店舗の陳列を埋めるのは土台無理なんです。1960年に日本で最初のコープ商品(生協バター)が登場してから40余年、現在日本生協連(日生協)以外の各生協独自の物まで含めると約1万5千点のコープ商品がありますが、それでも、コープ商品だけでは店の品揃えが出来ませんし、店の採算がとれません。それで、コープ商品(PB=プライベート・ブランド商品)以外に、日生協やそれぞれの生協で安全性が確認された市販商品(NB=ナショナル・ブランド商品)を、店舗や共同購入で取り扱っているのです。特に店舗の場合はスペース上の制約もあるので、PBはそんなに置けません。圧倒的にNBの方が多い。生協全体のPB/NB比率も、各生協の経営政策によって、それこそ千差万別です。

>>この戦略は、結局、スーパーと競うことになり、消費者運動としての【生活共同】から離れ、品質は置き去りにされ、生協職員には【効率化】が押し付けられるという構造かな。<<

 生協運動そのものは、19世紀の産業革命期にイギリスで誕生し、「より良いものをより安く」という所からスタートしました。日本に根付き始めたのは大正時代で、キリスト教関係者や篤志家の手で一種の福利厚生事業として広がり、昭和に入ると無産政党や労働組合の影響下に階級的生協運動の潮流も生まれてきます。戦時中は産業報国会に統合されますが戦後復活し、高度成長期やオイルショックを経て80年代に飛躍的に発展します。現在、日生協に加盟しているのは572生協で、組合員数は約2193万人(日生協HPより)。

 一口に生協といっても色々。地域生協・大学生協・医療生協・共済生協などの種類に分類されます。その中で地域生協について、運動・経営政策に即して見た場合、主に次の3つの潮流に分かれるのでは。

(1) 昔ながらの生協運動を続けているグループ。鍋山さんがケンカして辞めた「生活クラブ生協」も多分このグループだったと思う。「豚の一頭買い」とか「洗剤は粉石鹸しか使わない!」というのを実践している。熱心な人はホンマに熱心。但し周りがそれについて行けない。主に旧社会党・解同・新左翼系の、比較的小規模な生協が多い。

(2) 高度成長期(特に80年代)に広まった市民生協タイプのグループ。「何が何でも粉石鹸!」ではなく「コープ・クリーンも使う」。根底にあるのは「トータルとして合成洗剤の使用量を減らしていく」という考え方。謂わば「多数者革命の生協版」。主に共産党系の大規模生協が多い。

(3) (2)をもっとユルユルにして資本主義化したタイプ。先の大正時代の福利厚生事業から始まった生協や、連合系労組が母体となった地域生協など。灘神戸生協(現・コープこうべ)はその筆頭。当然ここまで来ると、もう党派性は殆ど無い。主に店舗中心の大規模生協が多い。

 協同組合原則(株式会社と生協の主な違い)について。

(1) 加入・脱退の自由、(2) 民主的運営(株式会社は1株1票の株主資本主義なのに対し、生協は1人1票で構成員の平等を保障)、(3) 出資配当(利率)の制限、(4) 剰余金処分の原則(組合員への最大奉仕、利用高割戻し、員外利用の原則禁止)、(5) 教育活動の促進、(6) 協同組合間協同の促進−以上が「協同組合6原則」と言われる、生協の運営原則です。

 建前上は確かに上記の通りなんだけど、実際にはもうスーパーと同じ側面も。「コープこうべ」なんてもう阪神間ではダイエーとシェア争いでしのぎを削っている訳で。生協資本には「元々は組合員の零細な出資金であり」「それでも資本には変わりない」という相反する2つの側面があり、生協運動にも「資本主義の搾取に対する抵抗」運動的側面と「資本主義競争に参加している」事業的側面がある。生協労働者も、確かに労働者なんだけど、その一方で専従職員としての献身性が求められたりする。内部の相互チェック機能が働かなければ、下手すればそれこそ「株式会社」や「北朝鮮」の様になってしまう訳です。

 以上、ごくかいつまんで説明しましたが、お分かりいただけたでしょうか?

  23 グローバル経済VS連帯経済
                  (2005年2月9日)

 ここでちょい、別の話題をアップします。

 キッカケは、私のアフガンHPのリンク作業から始まります。
 拙HPから、四トロ板常連の伊達さんが事務局長をされている「グローバリゼーションを問う広島ネットワーク」のHPに、当掲示板にも以前投稿してもらった誼(よしみ)でリンクを張りにいき、其処のサイトを何気に眺めていたら、表題の言葉に出くわしました。http://www.geocities.jp/hg_net2003/

 「連帯経済」−初めて聞く言葉です。果たして何ぞや?
 要するに、資本の論理に基づくグローバリゼーションの動きに対して、人と人との結びつきを大切にした経済活動(連帯経済)で対抗していこう−という動きらしいのです。「利潤を生むことを目的としない経済活動」全般をさす言葉で、NGO(非政府組織)やNPO(非営利組織)、協同組合(生協など)、共済組合などがそれにあたります。「環境や人権に配慮し、直接民主主義的な参加型のアプローチで取り組まれています。草の根の連帯経済は決して大規模なものではありませんが、お互いの顔が見える規模で、「地域レベルのネットワーク=もう一つの世界」を築いています。」−との事です。そして「連帯経済」の具体例として下記の諸形態が挙げられています。

(1) フェア・トレード:途上国の貧しい人たちが貧困から抜け出せるように、生産者と対等に直接取り引きすることで中間業者を排除し、一般の市場価格ではなく「フェア(公正)」な価格で商品を買うこと。また、価格の面だけではなく、環境破壊を引き起こさないような長期的視野で持続的な発展を目指している。

(2) マイクロ・クレジット:貧しい人たちの経済的自立を支援するため、少額のお金を担保なしで融資する取り組み。貧しい人にお金を貸してきちんと返済してもらい、彼らを経済的に強化することで、社会全体の強化を目指している。そのため持続的で効果的な貧困削減の手段の一つとされ、注目が集まっている。

(3) 地域通貨:お互いを助け合うサービスや行為を、時間や点数、地域やグループ独自の紙券などに置き換え、それを「通貨」としてサービスやモノと交換して循環させるシステム。最近はその取り組みも各地で始められており、国の通貨(円)とは異なる「もう一つのお金」的な役割を果たしている。

(4) トービン税:有価証券、土地などの価格変動によって生じる売買利益を目的に、資金を投げ打つ行為(投機)に課税をし、その税収を開発途上国の貧困や環境破壊の対策資金にあてるという考え方。いまだ実現していないが、一回の投機的な取引につき〇.一パーセントの税率でも、年間三九〇〇億ドル(=約四三兆円)の税金を徴収できるといわれている。

(5) 出資型金融機関:元本を保証する預金ではなく、本人の意思に基づく「出資」により貸出金を調達し、NPOや環境グッズの購入に融資を行う自主的な機関。出資者は元本や配当を保証されないが、市民たちが自ら運営する出資型金融機関が全国各地に広がりつつある。

(6) SRI(※)・エコファンド:環境を重視し、他の企業よりその取り組みが進んでいる企業の株式に投資するファンド。SRIの一種として環境に対する意識の高い市民を中心に、欧米では人気のある金融商品となっている。
(※:社会的責任投資。資金を投下する際に、財務的な観点からの判断だけでなく、資金の投下先の事業の社会的側面をも考慮して行う投資。)

 市場万能のグローバリゼーションによって、「貧富」「勝ち組・負け組」の差が広がり、産業空洞化、失業者の増加、不安定・低賃金・無権利労働が拡大している。政治不信と社会不安が広がる中で、庶民の不満が資本主義的グローバリゼーションの在り様そのものには向かわず、「弱者叩き」や「移民・外国人排斥」に向けられていくという状況がある。欧州ネオナチ・ネオファシズム、米国ネオコンの台頭や、'90年代以降の日本などに典型的に見られる様な形で。それに対して、資本主義・新自由主義的グローバリゼーションの在り方そのものを問うていこうというのが、「連帯経済」の考え方である−と言ったところでしょうか・・・(何やら、生協の話とも関わってくる様で)。

・「連帯経済」こそ第三の道(ジャン・ポール・マレシャル)
 http://www.diplo.jp/articles98/9804.html
・貯金に対する意識を変えよう!〜もう一つの世界は可能だ〜(エコ貯金ナビ)
 http://www.aseed.org/ecocho/tanemaki/anotherworld.htm
・世界社会フォーラム情報ページ
 http://nvc.halsnet.com/jhattori/wsf/
・反WTO草の根キャンペーン
 http://www.angel.ne.jp/~globalmarch/index.html

  24 シラク仏大統領も国際金融取引への課税を提唱−ダボス会議で
      (アフガン板でのまことさんの投稿)

                  (投稿日:2005年2月12日)


以下に紹介するのはトービン税導入を求めるフランスのNGO「ATTAC」の設立のきっかけになった「ル・モンド・ディプロマティーク」の小論ですが、欧州のゴリ保守政治家のシラク仏大統領と違い、こちらはグローバル経済のあり様自体を非難しているわけでは、しかしながらその志向性に類似面も見られるという現象は、興味深いですね。

それに比べてわが日本は・・・。

・「金融市場を非武装化せよ」(イニャシオ・ラモネ 1997年著述)

 「アジア諸国の株式市場を襲った台風が世界全体を脅かす。金融資本のグローバル化が人々を全面的に揺さぶっている。そこでは国民も、そして民主主義を遂行し、公共の福祉を保障すべき場としての国民国家も、埒外の存在に成り下がる。

(中略)

 21世紀の世界が略奪者の掟のまかり通るジャングルと化す事態を避けたいならば、金融権力の非武装化を、市民として重要課題に据える必要がある。

 日々、為替相場の変動を投機対象として、1兆5000億ドルを超える資金が世界を駆けめぐる。不安定な為替レートは実質金利高騰の一因となり、家計の消費と企業の投資を冷え込ませる。政府の財政赤字が膨れ上がる一方、数千億ドル単位の資金を動かす年金基金が投資先企業に求める配当金はつり上がる。「利益追求」の最初の犠牲者は給与所得者であり、大規模な人員解雇を行った企業の株価は急上昇する。こうした許し難い事態を社会がいつまでも許容できるはずがない。今こそ破壊的な資本の動きの中に、それを軋ませる砂の粒を投げ入れなければならない。それには3つの方法がある。タックス・ヘイブン(租税回避地)の撤廃、資本所得課税の引き上げ、金融取引への課税である。

(略)

 資本の無規制な流れは民主制を揺るがす。だからこそ抑止的なメカニズムの導入が重要だ。その一つが、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者(4)により、早くも1972年に提唱されたトービン税である。あらゆる為替市場での取引に少しばかり課税すれば、市場を安定化させることができ、国際社会の資金源にもなるという発想だ。0.1%のトービン税を導入すれば年間1660億ドルが得られることになる。これは21世紀初頭までに極貧を解消するために毎年必要とされる金額の2倍にのぼる。

(略)

 市民を支援するためにトービン税を求める団体(ATTAC)という名のNGOを、地球規模で作りだそうではないか。このNGOは、労働組合や文化団体、社会団体、エコロジー団体と連携することで、政府に働きかける市民のすばらしい圧力集団となることができるだろう。諸国の政府に行動を迫り、世界的な連帯税を実現させるのだ。」

http://www.diplo.jp/articles97/9712.html

>(4) トービン税:有価証券、土地などの価格変動によって生じる売買利益を目的に、資金を投げ打つ行為(投機)に課税をし、その税収を開発途上国の貧困や環境破壊の対策資金にあてるという考え方。(グローバル経済VS連帯経済 投稿者:社会主義者 さん 投稿日: 2月 9日(水)00時54分16秒 より)

に関連してですが、俗に「金持ちクラブ」とも称されるフランスのシラク大統領がエイズ撲滅対策のための資金調達として国際金融取引に0.01%課税する国際的税制度の導入を提唱したようですね。

・貧困解決に「国際連帯税」 ダボス会議で仏大統領提案 (朝日新聞 05.01.27)
http://www.asahi.com/international/update/0127/008.html

以下に紹介するシラク氏の演説にもあるように、氏は一応この税制を「トービン・タックスではない」と断っていますが、着想がトービン税に構想あることは間違い無さそうです。


*「世界経済フォーラム年次総会−ダボス会議 ジャック・シラク・フランス共和国大統領の演説」(衛星中継演説、パリ、2005年1月26日) より引用。

(前略)

「西洋のバイタリティー、その比類なき経済モデルを誇りに感じるのは当然である。それらは労働、イノベーション精神、企業の自由、法治国家に基づいている。中国やインド、ラテン・アメリカでは、グローバル化が貿易自由化や科学の進歩の普及とともに、何億人もの人々の生活の改善を可能にしている。(略)」

「このグローバル化経済にかかわっているのは世界人口の3分の1にすぎず、不安定な世界の特権的な少数派である。アフリカや新興国では、国民の大多数が農村やスラム街で進歩への約束が具体化されることを今でも待ち望んでいるとはいえ、いつまでも待ち続けることはないだろう。(略)」

「貧富の格差は、気の遠くなる規模に拡大した。途上国と経済開発協力機構(OECD)加盟国の1人あたりの所得格差は1980年に30倍だったが、今日では80倍に広がった。(略)市場と連帯の調和によって貧困を撲滅すること。これがわれわれが共有すべき野心である。」(略)

「経済格差は放置すれば無分別に広がり、最も弱い者の疎外化をいっそう進める。しかし、貿易自由化と投資開放は、適切なルールを伴えば、開発を強力に増進させる。」(略)

「経済が離陸する条件として、民主主義の進歩、統治の改善、汚職対策が第一に挙げられる。(略)とはいえ、経済開放、良い統治、企業精神の自由化は十分ではない。ほかにも開発の障害はある。多くの国々が隔離され、自然災害に繰り返し見舞われる一方、人々が感染症や栄養不足、非識字、切迫したニーズの圧力に苦しめられている。(略)」

「フランスは2つの方向に同時進行するよう提案する。(略)第1の方向とは、国際融資制度である。フランスはイギリスの提案をただちに支持した。それは金融市場から多額の資金を即座に調達できるようにするというものである。(略)」

「とはいえ、国際援助を減らすことなく、また予算に負担をかけることなく、どのように債務を返済するか? 国際的な税・課徴金、もしくは自発的な寄付といった新しい資金源を、これらの債務の後ろ盾にするのである。(略)」

「今日、私はエイズ対策の資金を調達するため、実験的に課徴金制度を創設するよう提案する。(略)医薬品に関するWHOの合意を実際に具体化し、価格の引き下げを強化すること。最貧国ならびにエイズ被害の甚大な国で、普遍的かつ無償の治療を感染者・患者に供給する道を歩むこと。(略)」

「これら新しい財源を見い出すため、いくつかの対象が考えられる。

国際金融取引に課税する道を探ろうではないか。これはトービン・タックスではない。国際連帯課徴金は正常な市場機能を妨げないよう策定されるだろう。その基盤として、次の3つが求められる。

− 0.01%以下の超低率とする。
− 国際金融取引の一部、1日約3兆ドルを対象に適用する。
− この課徴金は、租税回避の影響を避けるため、世界の主要金融市場の協力を基盤とする。

これによって年間100億ドルを調達できるだろう。

第2に可能な道。個人の自由に属するとして銀行の守秘義務を保持する国々に対して、これらの国々に出入りする外国資本の流れを対象とする課徴金によって、最貧国に甚大な損失を与えている、世界中の租税回避による影響の一部を埋め合わせるよう、どうして要請しないのだろうか? この課徴金は開発に利用されるだろう。

第3の道。空運もしくは海運で使用される燃料に課税する可能性を開こうではないか。免除制度に終止符を打つのではない。今日、これらの部門で使用される燃料は、温室効果やわれわれ地球の汚染の原因となっているにもかかわらず、すべての課税からほぼ免除されている。ここでもまた、数十億ドルを調達できる。」

(以下略)

http://www.ambafrance-jp.org/japanese/info_generales_j/decla_offic_jp/050126_Chirac_Davos_jp.html


  25 本日、京都議定書が発効しました!
                  (2005年2月17日)

 今日(注:2月16日の執筆開始時点での話)の夕方のニュースで、京都議定書が発効した事を伝えていました。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050216-00000014-kyt-l26

 懐かしい! 私の在職していた生協でも'90年代から地球環境問題にはかなり積極的に取り組んでいました。元々は大阪・西淀川の大気汚染公害の取り組みからやがて地球環境問題にも取り組むようになり、CASA(後述)というNGO団体にもずっと役員を派遣していた。当時私たち職員も、仕事が終わってから自主研の形で、オゾン層破壊やフロンガスの勉強会をしていたっけ。未だ地球環境問題そのものが目新しく、PCはLANの時代で、ウィンドウズも携帯も未だ無かった頃だった・・・。

 ここで簡単に解説しておきます。但しもう現役を退いて大分経つのでうろ覚えの部分も多々ありますが。京都議定書というのは、地球温暖化の元凶となる二酸化炭素などの温室効果ガス(温暖化ガスとも言う)の削減に向けての国際的な取り決めです。'12年までに先進38ヵ国の温室効果ガス排出量を1990年比で6%(EUは7%、米国は8%)削減し、'13年以降の削減対策も今年'05年から検討を開始する−という内容で、批准国の排出量合計が世界合計の55%を超えた段階で初めて議定書に効力が生じます。削減対策の進み具合が異なる国の間で排出量を調整し合う事(排出権取引)も認めています。

【参考資料】
・気候変動枠組条約、京都議定書とは(外務省)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kiko/
・地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)
 http://www.jccca.org/index.html
・地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
 http://www.bnet.ne.jp/casa/index1.htm

 この議定書が画期的なのは、(1) 達成期限の明示、(2) 総量規制、(3) 法的拘束力がある−などの点です。拘束力がある国際的な取り決めで、GNP比とかでなく(それだと先進国が有利になる)総量規制の考え方を取り入れている事です。但し問題点も少なからずあります。下記がその主な問題点です。

(1) 米国の議定書離脱。米国はブッシュ政権になって以降の'01年に議定書の批准を取り消しました。「我が亡き後に洪水よ来たれ」というネオコンぶりを此処でも発揮した訳ですが、先進国全体のガス排出量の24%を占める米国の離脱によって一時は議定書の発効自体が危機に瀕しました。代わりにロシアが批准する事で何とか瓦解を免れましたが。
(2) 日本の消極姿勢。日本は京都議定書の議長国でもある訳ですが、'90年比6%削減どころか逆に'03年までに8%もガス排出量を増加させてしまいました。今後'12年までに増加分と併せて14%を削減しなければいけない訳ですが、日本経団連や政府は企業の自主削減目標任せの姿勢をとっています。社会的責任よりも利潤追求を優先させた形で、EUの積極姿勢とは正に対照的です。EUの積極姿勢は東欧地域の排出量を削減するだけで目標達成できるという利点もあるからこそなのですが、やる気の無い日本がいくら他国を論っても全然説得力は無い。前置きはいろいろ言うが結局「国民や企業の活力や自発的な取り組み意欲を殺ぐような施策は決してとるべきではない」「自主性を尊重し、・・・環境と経済の両立を目指していくことを強く要望する。」(地球温暖化防止に取り組む産業界の決意・概要>日本経団連)という部分辺りが本音なんだろう。
 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/009.html 
(3) '13年以降の排出量削減にむけての具体的検討。
(4) 先進国以外の、中国・インドなどのガス排出大国における環境対策の強化。

・・・という事で、少し昔を思い出したニュースでした。

 あと、夜の休憩時間に見たNHK番組の「クローズアップ現代」で取上げていた、ノーベル平和賞を受賞したケニアの女性環境活動家の話を此処でも紹介しておきます。彼女は「貧困が環境破壊を招く」「環境破壊が内戦の引き金にもなる」と言っていた。開発途上国では外貨獲得・債務返済のために綿花やコーヒーなどのプランテーションや農地の開発が無秩序に進み、砂漠化が進行している。それに伴う環境破壊によって水資源をめぐる遊牧民と農民の対立が内戦にまで発展している所がある(例:スーダンのダルフール紛争)−NHKにも、まだまだこういう良質な番組も残っているんだと、今更ながら実感しました。

  26 歪められるBSE対策・食品行政
                  (2005年2月19日)

 まずは今日(正確には昨日)18日のしんぶん赤旗記事より。

・危険部位 混ざる恐れ/米の検査官労組が告発/米BSE対策/高橋議員、文書示す
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-02-18/01_01.html

 当該記事は、日米間で輸入解禁にむけて話がすすんでいる米国産牛肉の検査体制が、とてもまともな代物ではなかったというもの。
 日本ではご存知の通り、BSE(狂牛病)対策として国内産牛の全頭検査やトレーサビリティ・システム(牛の耳に識別票を付けて生育履歴を追跡する)が実施され、安全上の理由で米国産牛肉の輸入が禁止されています。米国はそれに対して事あるごとに輸入解禁を日本に迫るのですが、如何せん米国には日本並みの食肉検査体制は確立されていない。その為、「月齢20ヶ月未満の若い牛にはBSE原因物質となる異常プリオンは検出されない」として輸入を解禁し、「月齢20ヶ月未満牛の選別を行う」食肉検査に切り替えようという話がすすんでいたのですが。お膝元の米国の食肉検査官労組が、検査自体がいい加減な代物だという内部告発を既に昨年12月に行っていて、それを共産党が先の国会質問で取り上げた−という記事です。
 それによると、(1) 米国の食肉検査はそもそも目視で肉質や鮮度を見るだけのものであり、必ずしも月齢判定を意味しない、(2) 「月齢20ヶ月」の線引き自体の科学的根拠も曖昧、(3) 検査官には何ら実質的な権限は与えられていない−という事です。

 ここで少し自慢話をさせてもらうならば、私の在職していた生協では、北海道・宗谷黒牛の産直活動に取り組んできました。全頭検査もトレーサビリティ・システムも、BSE問題が表面化するよりもずっと以前から実施してました。
 http://omosiro.souyanet.ne.jp/soyabeef/

【参考資料】
・米国のBSE牛確認に関するQ&A(日本生協連)
 http://www.jccu.coop/Press_Release/Press_040114_01.htm
・牛海綿状脳症 (BSE)のページ(動物衛生研究所)
 http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/bse/bse-s.html

 これを読んだだけでも、「吉野家の牛丼再開」などに浮かれている場合ではないと思うのですが、こんな話は別に何も今に始まった事ではないのです。

 一例を挙げれば、食品の日付表示が数年前から、「製造年月日」表示から原則「賞味(消費)期限」表示(注)に切り替わっている事なども、重要な変化です。これは、<輸入食料品の利用伸び悩みの原因は、日本の消費者の鮮度意識にある>とする、米国をはじめとしたアグリビジネスやその意を呈したWTOによって、日付表示が今の形に変更された事によるものです。ちなみに付記すれば、日本生協連の方針は、「製造年月日・賞味(消費)期限」併記が原則だったと思います。この件については、日本の食品行政やWTOコーデックス食品規格の問題にまで行き当たり、話せば長くなるので、また場を改めて別稿の形でアップします。

 あと、産地偽装問題についても言及しないといけないかも。北朝鮮産のアサリはダメだというのなら、産地表示の確かなコープのアサリは如何? まあこれは蛇足ですが。

(注)「賞味(消費)期限」表示と書きましたが、細かく言えば「賞味期限」と「消費期限」とでは、若干意味合いが違います。「賞味期限」というのは「その日までに食べれば風味を損なわずに食す事が出来る」というもので、それに対して「消費期限」というのは「その日までに食べなければ衛生上問題がある」という意味合いがあり、後者の方がより強いニュアンスの物になっています(従って日持ちしない食品に使われる事が多い)。まあ、普段はどちらも同じ様な意味で使われますが。

  27 日本版「スーパーサイズ・ミー」
                  (2005年2月20日)

 今回は食品添加物の話を。

 皆さんは、福神漬の本来の色は、何色だと思っていますか。本来は、あんなまっ赤っかではないのですよ。また、数の子の色は? 本当は、あんな漂白されたものではないのです。いずれも、見栄えを良くしたり日持ちをさせる為に、着色料・保存料などの食品添加物が加えられて、「赤い福神漬」や「漂白数の子」として普段目にしているのです(最近でこそ、スーパーの店頭にも無漂白数の子が並ぶようになりましたが)。
 http://www.kuchikomi.ein-g.co.jp/nara/(ここから惣菜・漬物→福神漬のページに飛ぶ)
 http://www.coop-hokuriku.net/yokubari/kazunoko/kazunoko.htm

 普通、人間は1日に約4g、だいたいスプーン1杯分の食品添加物を摂取していると言われます。食品添加物は人間の食生活を豊かにしてきましたがその反面、さまざまな食品公害を引き起こしてきました。

 戦後1948年に現行の食添規格基準が制定された時は、食品添加物として指定された品目は僅か60品目でした。それが'53年(水俣病が発生した年)には81、'55年(森永ヒ素ミルク事件が発生)には96、という様にどんどん増え続け、'60年代後半には約350品目にまで達しました。そして、新潟水俣病('65年)やカネミ油症事件('68年)などの食品公害も頻発していきました。その中で、'72年には食品添加物の使用を制限する国会決議が採択され、これと前後して食添指定品目が330台にまで抑制されていました。しかし'80年代に入り、米国の圧力などによって再び指定品目が増やされてきました。

 そして'90年代に入り、WTO体制が確立されると、日本の食品安全基準や動植物の検疫基準を、日本の基準よりはるかに甘い国際規格(コーデックス食品規格→注)のレベルまで落とす方向で、食品衛生法が改悪されていきます。
 コーデックス食品規格では日本では指定(使用許可)されていない食品添加物が79品目もその使用を認められており、規制の内容も大甘です。一例を挙げれば、発がん性の疑いが指摘されている亜硝酸塩(主にハムなどに発色剤として使われる、ハムが赤いのはこれを使っているから)は日本基準の7倍、臭素酸カリウム(パンなどの小麦粉製品の膨らみや食感を整える為に使われる)は同じく1.66倍まで使用を認められています。(→2に続く)

(注)コーデックス食品規格・・・FAO・WHO傘下の合同食品規格委員会(コーデックス委員会)が制定した食品安全基準・動植物検疫基準の事。元々は非関税障壁の撤廃の為に設けられていた基準だったにも関わらず、食品安全基準の国際規格としてWTO加盟国に一律に押し付けられる事になった。
 そして食品衛生法の中身も改悪されました。その改悪の方向を一口で言うならば、(1) ポジティブ・リスト方式(使用できる添加物・薬剤のみ表示し、それ以外は使用禁止)からネガティブ・リスト方式(使用できない添加物・薬剤のみ表示し、それ以外は野放し)への転換、(2) 基準認証から自己認証への転換(行政による規制から、HACCPやISO認証などの業界自主基準に委ねる方向に軸足を移す)−というものです。HACCP(ハセップ、重要管理点方式)やISO認証という言葉を最近よく耳にしますが、これらはいずれも、多国籍企業が中心になって作成した「業界自主基準に基づく国際規格」です。先の拙稿「歪められるBSE対策・食品行政」でも言及した「<製造年月日>表示から<賞味(消費)期限>表示への切り替え」も、このコーデックス食品規格に合わせたものです。

 これらの改悪は偏に、アグリビジネスと総称される多国籍農業資本の利益の為に、食と農の安全を犠牲にしたものです。「スーパーサイズ・ミー」は何も米国だけの話ではないのです。この次は、こういうグローバリゼーションの流れに対抗する連帯経済の視点で、生協の産直活動について書いていきます。

【参考資料】

・食の安全と健康情報(このサイトの解説が、私が見た限りでは一番わかりやすい)
 http://lion.zero.ad.jp/~zav06243/index.html
・Zリスト
 日生協(日本生協連)が専門家の協力を得て、厚労省が認めている合成添加物の中でも安全性・有害性に問題があると思われるものをリスト化したもの。中には、かつて有害であるとして使用が禁止されていたがその後の研究で有害性が無くなったとしてリストから削除されたものもあり、現在17品目がZリストとして指定されている。各生協ではZリスト以外の品目についても独自基準を設けている所が多い。
 http://www.imix.or.jp/mikawa/unsyokuz.htm
・日本食品添加物協会(厚労省の外郭団体で、食添規制の考え方は生協とは異なります)
 http://www.jafa.gr.jp/

【参考文献】

・藤原邦達・著「よくわかる食品衛生法・WTO協定・コーデックス食品規格 一問一答」(合同出版)
 私が読んだ食品添加物関連の書籍の中で一番最近の本です(但しそれでも'95年の第1版)。生協退職後の動向は私もあまりよく知りません。最近、日生協のHPを見てみたら、私の時代には有害添加物の代表みたいに言われていた品目がZリストから外されていたりして、正直言って唖然としたりもしています・・・。

  28 産直−連帯経済の可能性
                  (2005年2月22日)


 今回は、産直について。 
 普通「産直」と言えば、スーパーの産直などがそうですが、単に「産地直送」という意味で使われます。生協の場合はそれだけではなく、産地(生産者)と消費者の提携=「産消提携」の意味で使われます。生協の農産品に付いている生産者カード(生産者名が明記されている)や、生協でよく取り組まれる産地交流見学会は、その実践例です。

 生協の産直活動には、「産直三原則」というのがあります。
 (1) 生産地と生産者が明確である事、(2) 栽培・肥育・肥培方法(農薬、肥料、飼料など)が明確である事、(3) 組合員と生産者が交流出来る事、の3つの原則です。これらの要件を満たして初めて、生産者の顔が見える、安心と信頼の商品が生まれるのです。そして、これが重要なのですが、その事を通して、消費者は安心・安全な商品を安価(適正)価格で購入できると共に、生産者(産地・農家)も減反・猫の目農政の下でも農産物価格を買い叩かれる事無く良い商品を安定的に供給でき、ひいては日本農業を守る事にもつながっていくのです。

 生産者から見た産直活動の先駆的な例としては、大分県・下郷農協の活動が比較的有名です。この農協は、'60年代から「労農牛乳」(今風に言うと生協牛乳)の販売を始め、やがてそれが福岡地区の産直グループの活動と結びつき、北九州地域に生協が作られ、無農薬・有機栽培野菜や黒豚肉の生産・加工へとつながっていきます。

 国産レモンの栽培も、生協を中心とした産直活動の中で始まりました。日本ではかつて、国産レモンの栽培がさかんでした。しかし'60年代のレモン輸入自由化によって衰退の一途をたどりました。しかしその後、輸入レモンに防かび剤として使われるオルトフェニルフェノール(OPP)・チアベンダゾール(TBZ)などのポストハーベスト(収穫後に用いられる残留農薬)が問題となり、'80年代から生協の産直活動とも結びついて、国産レモンの栽培が復活・発展してきました。

 とまあ、ここまでは以前に読んだ生協関係の書籍やインターネットで調べた事の請け売りなんですが、実際は<言うは易く行なうは難し>の部分も少なからずあるのです。まず、経済のグローバル化の流れの中で、産直と言う連帯経済の手法でどれだけ対抗していけるのか−という問題があります。

 鹿児島県のマルイ農協の例をあげます。この農協は鹿児島県北部の大規模農協で、卵・鶏肉とその関連商品(冷凍チキン・卵黄スープなど)が主力商品です。全国のたまご生産高の約1割を生産しており、主に全国の生協に出荷しています。マルイの卵の特徴は、自家配合飼料を使って、約450日齢(注:ヒナ鶏が産まれて成鶏になり産卵するまでの日数)くらいの新鮮な卵を供給しています。ちなみに市販のスーパーなどで売られている卵は500〜600日齢ぐらいの古いものが殆どです。ここで少し蛇足ですが、卵の<新しい・古い>の見分け方って知っています? 黄身の色が濃くて白身が盛り上がっているのが新しいのです(卵黄係数やハウユニットという数値で比較します)。
 当然、コストはかかりますね。今でこそ卵の価格が高騰していますので消費者にとってはあまり有り難味が感じられないでしょうが、以前はスーパーで10個入り1パック×0円とかで安売りしていたでしょう。この不景気のご時世では、消費者はどうしても「多少悪かろうが安い」方に流れます。
 某酪農牛乳の例。'00年の雪印乳業の食中毒事件の時は、生協と産直供給しているこの酪農牛乳に注文が殺到しました。生産が追いつきません。毎日フル稼働で操業している中で、牛乳パックのピンホール(パック漏れ)のクレームが多発しました。私のいた生協でも、配送現場の方からは「なんとかしろ」というクレームがじゃんじゃん上がってきます。私は当時、現場で商品管理の担当をしていましたので、その現場の声を本部事業部のバイヤーにぶつけ、当該農協担当者からも報告書をあげさせたりしましたが、なかなかクレームが減りませんでした。その中で事業部のバイヤーが言った事−「大手資本に切り替えれば牛乳パックのクレームなどはすぐ解消する、でもそういう訳にはイカンやろ、産直はみんな切り捨てるんか?」 その時は「何言うてんじゃ」と思いましたが、確かにその通りなのです。別に産直だからと言って大目に見るというのではないのですが、産直の相手と言うのは大抵中小・零細業者なのです。大独占資本と比べれば競争にならない。さりとて消費者・組合員の事を考えると「はい、そうですか」なんて事にはならない。

 また、減農薬・有機農法の商品を扱っているという事は、代替がきかないという事でもあります。病虫害や、今年の様に台風被害が多発しても、市販品のように他の産地や輸入品に切り替えられないのです。勢い「遅配・欠品」が多発する。勿論、どうしようも無い時はそうしますが、それを安易には出来ない部分が生協にはあるのです。「(安全・安心・適正価格という)思想を持った商品」を簡単に欠品には出来ない−という部分が。

 という事で、生協を退職してまた今頃<食・農の問題>で投稿する羽目になるなどとは思っていなかったので、当時の記憶を辿りながら付け焼刃で本を読みネットで調べているのですが、僅か数年の間の変化も小さくは無かったのです。「思想を持った商品だ」と言っていた生協が今や配送は委託・派遣の女性パートの仕事になり、「減農薬」自体が曖昧・いい加減だったという事で商品案内のチラシからヘルシーべジタの表示がなくなり、「共同購入」が共働き世帯の激増で立ち行かなくなり、「個配」「夜間配送」も世帯利用減・コスト増・採算割れで困難に直面し、「産直に未来はあるか」なんて議論まで起こっているという・・・。
 生協産直の形をとった連帯経済の活動が、効率・利潤優先で弱肉強食の「資本の論理」に基づくグローバル経済に、どれだけ風穴を開ける事が出来るか−という事を見てきたのですが、調べれば調べるほど奥が深くキリがないので、もうここで一旦一休みします。連帯経済との関係や、(アラミスさんには悪いのですが)中国産輸入農産物の問題にまでは辿りつきませんでした。という事で、後は北朝鮮・中国・チベット専門家のまことさんにタッチ!(笑)

PS:
 検索作業の中でたまたま見つけた面白そうなサイト。どんなサイトかは私もよくわからないのですが、何か面白そうだったので紹介しておきます。
 http://www.suzuki31.com/etc/index0.html

  29 3.1ビキニデー
                  (2005年2月28日)

 明日は3月1日ということもあり、ここで3.1ビキニデーの取り組みについて少し書いてみます。

 ビキニ事件についてはご存知の方も多いと思います。1954年3月1日に、静岡県焼津港のマグロ漁船「第五福竜丸」が、太平洋のマーシャル諸島(現在はマーシャル諸島共和国)のビキニ環礁で米国が行った史上最大の水爆実験による死の灰を浴びて、乗組員23名全員が被曝して急性放射能症にかかった事件の事。故・久保山愛吉さんの「原水爆の犠牲者は私を最後にしてほしい」という言葉は有名ですね。この事件を機に日本では原水爆禁止運動が盛り上がり(その年に始まった原水禁署名が翌年4月頃までに3300万以上に達した)、翌年8月の第1回原水禁世界大会開催のキッカケになりました。ついでに付け加えると、当時日本で最初に上映された怪獣映画「ゴジラ」はビキニの水爆実験が映画の背景になっていますし、'60年代から流行り出した「ビキニ水着」も当時の世相が受けた衝撃の大きさからその名が付けられたものです。

 このビキニ事件については、ロンゲラップ島などマーシャル諸島一体住民の放射能被害の問題や、高知県のマグロ漁船など他にも800隻以上の日本漁船が被爆している事、米日政府がマーシャル諸島住民と第五福竜丸被災者にそれぞれ、僅かばかりの「掴み金」「経済援助」を供与しそれと引き換えに被害実態をもみ消そうとした事(この事で第五福竜丸被災者は周囲から妬み差別を受けることになる)などの事実が指摘されてきました。

 しかしそのような逆流にも関わらず、静岡の運動は広島・長崎と並んで日本の平和運動をリードしてきました。ビキニデーは故・久保山愛吉さんの墓前祭行事を中心に毎年取り組まれ、静岡では生協などの市民団体と平和運動団体との共闘が先進的に取り組まれてきました。実際、私も生協職員時代に市民平和行進のリレー行進者として静岡県下を1週間歩いた事があるのですが、何度となく地元の人からカンパをされました。

 「戦争体験の重さや想像力(イマジン!)」の風化が指摘される昨今。「奴隷の平和」の名で平和憲法の価値が貶められ、「国際貢献」を装った「戦争の出来る国作り」が進められ「国の為に命を捧げる事の尊さ」まで押し付けられようとする今日この頃ですが、改めて「平和」「人権」「民主主義」の尊さを思い起こす必要があるのではないでしょうか。

【参考資料】
・ビキニ市民ネット焼津
 http://www5d.biglobe.ne.jp/~kazkato/fukuryumaru/index.htm
・3.1ビキニデー
 http://love9cafe.gooside.com/bikini.htm
・東京都立第五福竜丸展示館
 http://www.d5f.org/
・ロンゲラップ平和ミュージアム
 http://www9.plala.or.jp/jojoi/html/Japanese/level%202/jhome.htm

付記
 そもそも「平和」「人権」「民主主義」の3つは互いに切り離せないものであって、そのどれが欠けても他の2つは成り立たない。「奴隷の平和」なんて事自体、本来はあり得ない(そんなモノは平和の名に値しない)のです。だから「プロ奴隷」(ネットウヨク)は「平和・人権派」と一括りにして攻撃してくるのであって、そこが「プロ奴隷」の奴隷たる所以でもある訳です。

  30 もう一つの世界、もう一つの日本
                  (2005年12月16日)

 米国産牛肉輸入再開にしても耐震強度偽造にしても、何が一番腹立たしいかといえば「人の生命を一体何だと思っているのか!」という事です。前者は米国への忠義立てによって手前たちがそのお零れに預かる為に、後者も手前たちの利益と保身の為に、それぞれ人の命を犠牲にしても憚らないという事でしょう。それで犠牲になるのはいつも庶民。そう考えると、もうアホらしくてやってられない。

 しかもそこには国が常に一枚噛んでいる。牛肉輸入再開にしても耐震偽造にしても、いかにも国が公正・中立・第三者の立場で審議しているかのような体裁をとりつつ、実際は業界ぐるみの悪徳商法に対してお墨付きを与える役割を果たしているにしか過ぎないのです。食品安全委員会で発言権を握っているのは米国とそのお零れ頂戴の吉野家などの外食チェーンの息のかかった委員であり、民間検査機関を牛耳っているのも国交省の天下り役人や業界からの出向役員などです。それが政官業癒着の「国家独占資本主義」という政治体制のしくみ。その下で「越後屋、そちもワルじゃのう」「いえいえ、お代官様の方こそ」と当事者同士がガハハハハと笑い、人の命、人間の生存権を平然と弄ぶ。

 そういう政官業癒着は昔から今もずっと続いていますが、それに対する国民の不満・政治不信の高まりに対応して不満逸らしの為に登場してきたのが、「自民党をぶっ壊す」と言って出てきた小泉純一郎。明治維新の時の「ご一新」よろしく、森や小渕までの旧来保守の利権政治を一掃してくれるような幻想をさんざん振りまきました(今でも)。

 しかし、彼が実際にやったことは、旧来の政官業癒着・派閥中心・利権分配政治を、より米国資本主義標準に近い奥田やホリエモンによる新自由主義の弱肉強食政治に置き換えただけでした。謂わば、時の支配者が幕府から天皇に変わり、悪徳商人が越後屋から三河屋に変わっただけ。この辺も、支配者は変わっても民衆支配の構図は変わらず、民衆は四民平等や文明開化の副産物と引き換えに以後1945年までずっと帝国主義戦争に巻き込まれていった日本民衆の苦難と重なります。

 米国資本主義標準の新自由主義の下では全てが市場原理最優先であり、人の命や人間の生存権・社会的権利の保障は二の次なのです。負け組が勝ち組に這い上がる為には常に他人を蹴落とし、どんな理不尽な事でも自己責任の名で耐えなければならないのです。そして政府は全てを弱肉強食の民間市場原理に委ね、ひたすら軍事と治安に偏重し社会福祉・社会保障の責務を放擲した「小さな政府」という名の夜警国家・米帝植民地政府に成り下がるのです。多分今回の一連の不祥事でも、やがてトカゲの尻尾きりで幕引きが為され、その次には「BSEに感染したのは健康管理を怠った人間の自己責任」「欠陥マンションをつかまされたのも安かろう悪かろうに流れた人間の自己責任」なんて風潮が意図的・政策的に流されて、為政者の責任がウヤムヤにされるに決まっています。現に今も武部がそれに近い事を言っているでしょう。

 それに抗して、旧来の復古反動・利権分配の保守政治でも、オルガリヒ(新興資本家)による米国属国の海外派兵・弱肉強食政治でもない第三の道、「もう一つの世界」「もう一つの日本」をめざす動きが、世界と日本の各地で始まっています。その一つが、今回の香港で爆発した反WTOの運動です。

 貿易取引に関する国際機構であるWTO(世界貿易機関)は、世界銀行・IMF(国際通貨基金)・FTA(自由貿易協定)などと同様、実際には資本主義大国による第三世界に対する帝国主義的支配の場、世界標準の名による新自由主義の押付けの場として機能し続け、「公正な貿易」「民主的な国際関係」「持続可能で環境にやさしい経済」の実現を要求する第三世界諸国や資本主義大国の自覚的労働者・農民の声と対峙してきました。それ故に近年では、ジェノバ・シアトルと閣僚会議開催のたびに激しい反グローバリズム運動の洗礼を浴びてきました。今回の香港でも、「不公正」な既存秩序を維持する側と「公正」経済を要求する側とが激突しました。

 今回の香港行動では、韓国・民主労総、台湾・労工陣線を始めアジア各地の労働者・農民が参加しています。日本からも、農民連・食健連・AALA連帯委員会などの共産党系からレイバーネット・ATTACジャパンなどの新左翼・独立系左派までが抗議行動にはせ参じ、期せずして左翼統一戦線が一時的に形成された形になっています。それら参加諸団体の具体的要求項目はいずれも、アグリビジネスや先進工業国による途上国経済支配、不等価交換、モノカルチャー経済、債務奴隷化、飢餓輸出、金融操作、環境破壊に対する規制や、各国の食糧主権擁護などですが、その底流にあるのはやはり弱肉強食の帝国主義・新自由主義的経済秩序に対する抵抗です。

 人の生命を一体何だと思っているのか!
 公正で民主的な貿易・取引・経済を! 人間らしい暮らしを!
 BSEや欠陥マンションを生み出す不公正・殺人経済、金儲けの為なら何でもありの新自由主義はゴメンだ!
 大企業やアメリカ様の為に、殺されて堪るか!
 戦争も差別も、安倍も奥田も、靖国ゾンビもネオコンも、真っ平だ!

・香港:WTO抗議で大衝突、けが9人心臓発作2人(サーチナ・中国情報局)
 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=1214&f=business_1214_006.shtml
・香港の反WTO運動情報ページ「抗議世貿」が掲載されたATTACジャパンのサイト
 http://www.jca.apc.org/attac-jp/japanese/
・香港WTOレポート〜日本から170名以上が参加(レイバーネット)
 http://www.labornetjp.org/news/2005/1134543877084staff01
・WTO香港行動参加者 私の一言>新聞「農民」記事データベース>農民連
 http://www.nouminren.ne.jp/

・WTO・反グローバリゼーション運動関連 参考資料
 ・WTO(世界貿易機関)>対外経済政策総合サイト
  http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/wto/index.html
 ・世界貿易機関(WTO)について
  http://organization.at.infoseek.co.jp/aboutwto/
 ・WTO関連資料>WTO氷結キャンペーン>アシードジャパン
  http://www.aseed.org/trade/wto.htm
 ・世界社会フォーラム情報ページ
  http://nvc.halsnet.com/jhattori/wsf/
 ・ヤパーナ社会フォーラム
  http://www.kcn.ne.jp/~gauss/jsf/

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