アフガン・イラク・北朝鮮と日本
掲示板言論の推移1
−在日コリアンとの連帯めざして


  「在日コリアン関西集会」参加レポート




 「拉致被害者・家族を支援する在日コリアン関西集会」(2/15日14〜16時、大阪市立中央会館)に参加してきました。これは「日本人を拉致した北朝鮮の国家犯罪を許さず、日本人拉致被害者家族を支援する」在日コリアンの集会です。たまたま当日予定が空き、私の地元大阪で在日・拉致被害者家族共催の集会があると聞いて、今後参加する機会はめったにないと思いましたので。私はこの種の集会参加は初めてで、不安もありましたが(実は総連工作員や街宣右翼が跋扈していたら帰ろうと思っていた)。14時の開演時間には約300名収容の1Fホールは満席・立見続出で、マスコミ関係者も10人以上来ていた様でした。以下は集会次第の要旨ならびに私の感想です。

  • 講演「拉致問題を追いかけて」
    (朝日新聞プロデューサー石高健次さん)
    • 在日コリアン60万人のうち10万人が北に帰国し(全体の1/6)、そのうち1.8万人(約2割)が行方不明。北の人権抑圧体制の酷さに怒りを覚える。
    • 北は在日の身内を人質にとり、在日への脅迫を行っている。原タダアキさんの拉致実行犯シン・ガンス(辛光洙)は在日を脅かして生野区内に1ヶ月以上潜伏していた。
    • 総連がキャスティングボードを握る。総連が変われば北も変わる。今回参加する総連分会長の勇気を称えたい。
  • 横田・有本ご夫妻の話
    • お二人とも在日との共闘・協力を強調されていた。単に自分の身内や日本人という枠を超えて全ての拉致被害者の救出と問題解決を訴えておられた。
    • 「民族や人種を超えて、一人の人間として北の扉をこじ開けていく」(横田さん)
    • 「北に人質を取られた在日の方も拉致被害者・家族も気持ちは同じ」(有本さん)
  • 朝鮮総連現役分会長ペク・ソンボ(白星保)さんの話
    • 昨年9/17日までは拉致の事実を信じてなかった。当日夕方、仕事先でインターネットを見て初めて事実を知り愕然となった。
    • 実は昨夜2時まで激論し帰宅後も妻と話し合い、今日12時過ぎに自分の正直な気持ちを話す決意を固めた。祖国には思い入れがある。しかし民族が犯した過ちを人間として認め、誠実に対応したい。
    • 植民地時代の清算も、日本人に押し付けるのでなく、問題提起という形で日本人が自発的に考えていくための手助けをしたい。そして、隣人どうしなのに50年以上も続いた不正常な関係は、我々の世代でいい加減終わらせたい。
  • 講演「拉致事件と在日」(在日韓国人ペタ弁護士)
    • 在日コリアンは植民地時代の経験から、自国への思い入れが強い。それは時に過剰な愛国心となり真実を見る眼を曇らせる。自国への(過剰な)思い入れを「断ち切る」事が在日コリアンに今求められている。

そして最後に
「拉致事件に対する在日コリアン宣言」「朝鮮総連に対する要望決議」を採択して集会を終わりました。


 私は拉致問題に関してはまだまだ初心者です。集会の雰囲気を伝えるだけの文才もありません。今回も経過報告という形でしかお伝えできません。ただ感じたことは、

  • 私も含め大多数の人は「総連」「民団」という本国系組織で今まで在日の方を見てきました。だけど今日の集会で、朝鮮・韓国の国籍を乗り越えた「在日コリアン」という概念が提起されている事、本国系組織の枠を超えた自主的組織(集会実行委員会中心メンバーの「高槻むくげの会」も「在日コリアン市民協会」という自主的組織に加盟している)が結成されている事を知りました。
  • 《拉致問題は民族・歴史問題でなく人権問題として捉えるべきだ》この事を痛感しました。私は、日本・コリアンといったナショナリズムの立場とは別に、NYテロやアフガン・イラク攻撃の犠牲者に思いをはせ国内の人権侵害(過労死・失業・リストラ)に怒る一人の人間として、同じ視線で、重大な人権侵害として拉致問題や北朝鮮民主化の問題を捉えて生きたいと思います。


 高槻むくげの会のHPアドレスを下に記しておきます。
「在日コリアン宣言」「総連への要望決議」などの集会宣言を下記に掲載します。他にこの集会に参加された人がいたら、私の上記報告の誤りや不足している点を補足いただけたら幸いです。

http://www.mukuge.net


  「在日コリアン関西集会」集会宣言・決議

拉致事件に対する在日コリアン宣言(全文)
 
 在日韓国・朝鮮人(以下、「在日コリアン」と言います)は、1910年の韓国併合、日本の朝鮮半島植民地政策を契機に誕生しました。その形成過程には、土地収奪による流民化、創氏改名、皇国臣民化政策による個人の尊厳の否定にとどまらず、様々な形態の強制連行といった人権侵害の暗い歴史が横たわっています。1945年8月15日の後においても、一部の生存権に改善は見られたものの、残念ながら半世紀を経過した現在においても、依然として在日コリアンの人権状況は厳しい言わざるを得ません。日本政府に対する戦後責任を問う裁判が、戦後50年以上も経過した現在においても後を絶たない理由はここにあります。

 このような基本的人権の侵害された差別状況を一日も早く解消することが、日本に住む人々の共通の歴史的課題であるとの認識の下、在日コリアンは、今日に至るまで、一部の理解ある、良心的な日本人の方々の支援を受け、粘り強い運動により多くの成果を勝ち取ってきました。私たち在日コリアンは、日本政府や日本国民に対する闘いの中で、再三、民族や国籍の如何を問わず、一人一人の基本的人権が最大限に尊重されるべきものであることを主張してきました。基本的人権の尊重という人権思想こそは、全世界の先人たちが貴重な生命を賭し、多大な犠牲を払って勝ち取った、人類共通の財産とも言うべき思想、価値観であり、現在においては、基本的人権の尊重は、大多数の国の憲法や国際人権規約に謳われた、世界の人々の共通語になっているからです。

 しかしながら、昨年、9月17日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、「共和国」と言います)は、13名の日本人拉致と8名の死亡を明らかにしました。未だ拉致事件の真相は明らかではありませんが、共和国による個人の基本的人権の重大な侵害があったことに疑問の余地はありません。20年以上もの長期間、肉親や友人との接触を絶たれ、隔離された状況で不安な日々を送ってこられた拉致された方々とそのご家族、また死亡と発表されたご家族の方々、その他多くの関係者の苦悩は我々の想像をはるかに超えています。共和国の重い扉を開くために長年にわたり粘り強く闘って来られた方々の労苦は如何ばかりのものでしょうか。

 繰り返される国家の犯罪。私たち在日コリアンは、偏狭なナショナリズムに囚われて、拉致事件から目を離してはなりません。在日コリアンがこれまでに日本の人たちに訴え、語ってきた人権思想が本物であり、日本の地において、日本の人々と共生するに値する人間であることを、私たち在日コリアン自身が再確認し、また日本の人々に新たに認識してもらうためにも、在日コリアンは、あらゆる過去及び現在の呪縛を解き放って、拉致された人々や、そのご家族の侵害された人権を回復するため、あらゆる連帯と支援を行いましょう。そうすることにより、在日コリアンは、真に偏狭なナショナリズムを克服し、基本的人権を尊重するという、歴史が課した崇高な役割を、この地で果たすことができるのです。 (2003.2.15)

(注)「拉致被害者・家族を支援する在日コリアン関西集会」(2/15日、大阪)集会決議。段落分けは投稿者によるもの。


朝鮮総連に対する要望決議(全文) 
 2002年9月17日、金正日国防委員長が多数の日本人を拉致していたことを認めた。これにより、在日本朝鮮人総連合会(以下「朝鮮総連」)が「拉致はでっち上げ」と、かねてより主張していたことの「嘘」が明らかになった。「朝鮮総連」は結果的に日本社会を欺き、拉致被害者家族らに取り返しのつかない過ちを犯してきたことになる。それは、朝鮮民主主義人民共和国(以下「共和国」)による拉致という国家犯罪を隠蔽し、拉致被害者らの生命を危機に晒すことのみならず、その家族をも絶望の淵に突き落とす行為であったと言わねばならない。その責任は重大である。

 しかし「朝鮮総連」は今日まで拉致問題について明確な反省も謝罪も行っていない。それどころか、朝鮮総連副議長が「(拉致事件について)私どもの思いと相反する結果になったことは残念で、遺憾なこと」と、全く他人事のような見解を述べている。拉致事件は「でっち上げ」と主張し日本社会のみならず在日韓国・朝鮮人社会をも欺きながら、こうした不誠実な態度に終始する「朝鮮総連」に対して、改めて強い憤りを感じずにはおれない。

 私たちは、本日、「拉致被害者・家族を支援する在日コリアン関西集会」を開催し、その参加者で以下の通り決議したので、この要望事項を誠実に実行されるように強く要求します。


1.「朝鮮総連」は「拉致でっち上げ」と主張して社会を欺いてきたことを謝罪し、拉致被害者家族には直接誠実に謝罪すること。
2.「朝鮮総連」は共和国政府に対して、拉致事件の真相解明を強く働きかけること。
3.「朝鮮総連」は拉致事件への組織関与を徹底して調査し、その有無を社会に公表すること。 (2003年2月15日) 以上

(注)「拉致被害者・家族を支援する在日コリアン関西集会」(2/15日、大阪)集会決議。段落分けは投稿者によるもの。

  在日コリアン団体比較表(当日配布資料、全文)

名称 組織の形態 組織の目的
朝鮮総連 ○組織(形態)
:全国統一型  
○会員資格・国籍
:朝鮮籍・韓国籍
○会員の立場
:北朝鮮海外公民○本国との関係:盲従
・在日全体朝鮮同胞を朝鮮民主主義人民共和国政府の周囲に総結集させ、祖国の南北半島同胞との連携と団結を緊密強固にする。
・祖国の主権と領土を侵害し、内政を干渉する米帝国主義者を魁首とする一切の外来侵略者を撤退させ、祖国の平和統一独立の為に貢献する。
・在日朝鮮同胞子弟に母国語と文字によって民主民族教育を実施し、一般成人の中に残っている植民地奴隷思想と封建的遺習を打破し、文盲を退治して民族的文化の発展のために努力する。
韓国民団 ○組織(形態)
:全国統一型  
○会員資格・国籍
:韓国籍
○会員の立場
:韓国海外国民 
○本国との関係
:追従
・常に大韓民国の国是を遵守しつつ祖国と一体となり、祖国の発展に参与し貢献する。また本国の国民と500万海外同胞との連帯を強固にし、民族的大同団結に寄与する。
・祖国の統一が、人類共通の良識である自由民主主義の理念のもと平和的・自主的に達成されるべきであるとの方針を堅持し、この具現のために努力する。
・在日同胞社会が不幸な歴史の共有者であり運命共同体であることを認識し、国籍と所属を越えた幅広い交流・和合により同質性を回復し、福祉の向上と生活権拡充のために尽力する。
民族差別と闘う連絡協議会 ○組織(形態)
:全国協議会  
○会員資格・国籍
:不問
○会員の立場
:不問  
○本国との関係
:是々非々
・あらゆる形態の民族差別と闘い、その解消の為に各地で行政交渉や交流等の実践を行う。
渡来人倶楽部 ○組織(形態)
:地域独立型  
○会員資格・国籍
:コリア系住民が中心
○会員の立場
:日本での永住
○本国との関係
:是々非々
・近代の渡来人である、在日韓国・朝鮮人(在日コリアン)への「根拠のない偏見や民族的差別」を解消することによって、彼らがルーツを隠すことなく堂々と暮らすことの出来る「自由で公正な開かれた社会」の実現を目指す。
・現在の渡来人である日系人やアジア人など、外国からの移住者に対する「排他的な対応」を改善することによって、彼らが地域社会の一員として心豊かに暮らすことの出来る「包容力と多様性を持った多文化共生社会」の実現を目指す。
・世界平和を標榜し、国際社会のリーダーたらんとする21世紀の日本が、世界から信頼され尊敬を集めることが出来る様、日本社会の「国際感覚と人権意識」の向上を目指す。
在日コリアン市民協会 ○組織(形態)
:全国統一型  
○会員資格・国籍
:コリア系日本人・在日コリアン永住者
○会員の立場
:日本での永住
○本国との関係
:是々非々
・在日コリアンが、本国の政治的影響を受けることなく、自らの意思で発言し行動するとともに、関係国に対しては是々非々の姿勢を貫く。
・在日コリアンが、小異を捨てて大同につくとともに、互いに協力して社会問題の解決に取り組む。
・在日コリアンが、人間愛に基づく活動や人道的活動を行うことによって、自らの社会的地位向上に寄与する。

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