7月29日、朝鮮総連新潟県本部へ銃弾が撃ち込まれた。さらに、ハナ信用組合新潟支店へ時限発火装置が仕掛けられていた。それに続き、31日には、神奈川県のハナ信用組合に火炎ビンが投げ込まれた。
これらの襲撃は今北朝鮮に向き合っている日本国内の人々の意思を、明らかに1つの方向に導こうとするものだ。とりわけ、拉致という国家犯罪を金正日が認めたにもかかわらず、その真相を明らかにしないばかりか、今も続く権利侵害に対して、その回復さえ認めようとしない北朝鮮の態度に対して、巻き起こった国民の怒りを戦争要求へ誘導しようとするものだ。さらに、無差別的暴力行使は、金体制の圧政に苦しむ北朝鮮国民、さらに、韓国国民、戦後共に生き抜いてきた在日韓国朝鮮人への憎悪を含んだものだ。
拉致という人間の尊厳を否定する国家犯罪を憎み、拉致被害者と共に、真相究明、今も続く尊厳への侵害を終わらせ家族を1つにすることを北朝鮮金正日に要求する気持ちを、俺も共有している。
しかし、この気持ちは、北朝鮮で、餓死していく人々の悲惨を止めることを北朝鮮に要求する気持ちと1つでなければならない。さらに、戦後北朝鮮に送り出してしまったために、悲惨の中に巻き込まれてしまった北朝鮮帰国者への悲惨を終わらせる事を要求する気持ちと1つでなければならない。
俺は、階層化され、相互監視の軍事国家北朝鮮の実情を知らなかった。帰国し、在日朝鮮人であったことが、更なる迫害を受ける事になった帰国在日朝鮮人とその家族の事を知らなかった。そして、日本から拉致され、金体制の独裁国家に隔離されたり、殺されたりした日本人のことを知らなかった。
しかし、この3つの事を知って、総ての悲惨を終わらせるために戦っていた人がいるだろうか。少なくとも、知らなかったことはそれ自体で誤りでない。しかし、このことを知って、他の事を犠牲にしても、1つの事だけを解決するのだとうごくことはあやまりである。
俺が拉致された人々の原状回復を戦争的手段で果たそうとすることに反対するのは、それが金正日体制に心を寄せ合い、立ち向かおうとし始めた連帯を粉々にしてしまうからだ。
金正日体制が、拉致という犯罪を日本国内で実行していたという事実から、在日朝鮮、韓国人のなかに、新たな連帯が生まれ、拉致被害家族との連帯も生まれている。戦争的手段の道は、アメリカの属国化の道であり、アジアからの孤立、近隣諸国民との共生拒否の道である。
今回の一連の襲撃は、在日朝鮮、韓国、そして日本国民の連帯で、北朝鮮金体制の国民悲惨の政治を終わらせようとする意思の強まりをたとうとするものだ。
もちろん、こんな襲撃行為は犯罪であり、だれも支持しないと個々人に聞けば答えるかもしれない。
しかし、日本にはこのような悪意が先導し、アジアへの侵略を進めていった大日本帝国の歴史があるのである。北朝鮮金正日体制を、戦争以外の方法で終わらせようとする者は、今共にこの襲撃に批判の声をあげなければならない。
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